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ビッグデータの価値を疑うことはない。ただ、ほとんどのアナリティクス・プロジェクトにおいて、そこまで大量のデータを必要とすることはない。スモールデータのほうが短期間で利益を上げられるなど、組織にさまざまな恩恵をもたらすにもかかわらず、多くの企業がその価値を軽視している。本稿では、スモールデータを活用するための4つのステップを示す。


 高度なデータサイエンスやビッグデータ、機械学習、人工知能に夢中になるあまり、「スモールデータ」を軽視している企業があまりに多い。これは、大きな過ちである。

 比較的容易で、どこにでもあり、しかも効力のあるスモールデータ・プロジェクトは、あらゆる組織における、あらゆる部署の、あらゆる従業員と管理職、そしてあらゆる階層のリーダーにとって、深遠な意味合いを持つ。

 スモールデータ・プロジェクトに必要なのは少数のチームで、みずからの職場の問題に、小さなデータセットを用いて対応する。ビッグデータ・プロジェクトで使われるような数百万以上のデータではなく、数百程度のデータポイントからなるデータセットだ。焦点がしっかりと絞られており、あらゆる人にとってわかりやすい、基礎的な分析法を用いる。パートタイム勤務の人が数ヵ月で終えることが可能で、プロジェクト当たり年間1万~25万ドルの経済的利益を生み出してくれる

 企業にはスモールデータ・プロジェクトで取り扱える問題が山ほどあり、40人規模の部署ならば、年間20件のプロジェクトを完了できるはずである。その利益の累積は計り知れない。

 ビッグデータ・プロジェクトの場合には、往々にして数十人ものスタッフが関わり、それぞれが異なるアジェンダと社内政治を抱えている。莫大な予算を要し、しかも失敗率が高い

 これに対して、スモールデータ・プロジェクトは成功する可能性が高い。したがってスモールデータ・プロジェクトは、データアナリティクスに必要な筋力を組織内に培う。データを有効に用い、必要なスキルを獲得し、自信を育み、ビッグデータが要求するような文化を育てるためには何が必要かを、組織全体が学ぶ助けとなるのである。

 さらに、「自動化で自分は必要なくなるのではないか」とか、「自分の仕事はもはや、手出しできない形に変化するのではないか」と気をもむ人が多いなか、スモールデータ・プロジェクトに参加することで、誰もがみずからのデータリテラシー(データの活用能力)育成に向けて前向きな一歩を踏み出すことができ、自分の中の恐れに対処することができる。

 しかも、スモールデータ・プロジェクトは楽しい。電気通信の分野に20年間従事している、あるベテランの現場マネジャーは、スモールデータによる一連の品質向上プロジェクトで自分のチームを率いたのち、我々も出席した打ち上げの席で、高揚して次のように述べた。「これは、私の20年間のキャリアの中でも最高の経験でした。自分がどこへ向かうのかをコントロールできる感覚を持てた、唯一の時間だったのです」

 我々は世界中で数百、もしかしたら数千ものプロジェクトを、こうした成功談へと導く手伝いをしてきた。スモールデータ・プロジェクトに参加した人は、数値とその意味について理解し、実際には何が起きているかを探り、解明することを大いに楽しんでいる。チームで仕事を行い、みずからの働きの成果が自分の仕事と会社の業績を高めるのを目の当たりにするのは、嬉しいことだ。

 スモールデータの効力を発揮させる作業は難しくはないものの、こうしたプロジェクトの優先度を高めよう、という思考にスイッチするのは簡単ではない。とにかく一歩踏み出すために、以下のステップを取ることをお勧めする。