
昨今、特に伝統的大企業では、ミレニアル世代の人材を確保し、維持することに苦戦している。その対応策の一つとして世界中の有力企業が実践しているのが、「リバースメンタリング」である。若手社員と幹部がペアになり、幹部側の仕事に対する姿勢や考え方を問い直すことが目的だ。本稿では、リバースメンタリングに期待される効果と、実践する際の留意点が示される。
金融サービス大手BNYメロン・パーシングのアドバイザー・ソリューションズ部門を率いるマーク・タイバージーン最高経営責任者(CEO)は、自社の未来を考えたとき、ある問題に気づいた。その問題とは、ミレニアル世代の若者が金融サービス業界で働くことに興味を持たなくなっていることだ。しかも、同社に入社したミレニアル世代は、上の世代よりも離職率が高かった。
これは、BNYメロン・パーシングだけの問題ではない。多くの企業は、ミレニアル世代の人材を確保し、この世代の消費者に見放されないために苦心している。
この課題への対応策の一環として、世界の多くの有力企業が実践し始めているのが、幹部チームを対象とした「リバースメンタリング」だ。一言で言えば、幹部チームのメンバーと若い社員にペアを組ませ、戦略と企業文化の面で重要な問題について、若手が幹部にメンタリングを行う仕組みである。
この種の取り組みは、最近に始まったものではない。1990年代後半にジャック・ウェルチ会長(当時)率いるゼネラル・エレクトリック(GE)がリバースメンタリングを導入し、上級幹部たちにインターネットのことを学ばせた。
しかし、今日のリバースメンタリングは、テクノロジーに関する知識を共有するだけにとどまらない。戦略上の問題とリーダーシップのあり方、そして仕事に対する姿勢について、上級幹部の考え方を問い直すことを重要なテーマにしている。
BNYメロン・パーシングでも、タイバージーンの旗振りでリバースメンタリングが導入された。プログラム発足時にメンターを務めた一人であるカイラ・ケネリーによれば、「(タイバージーンが挙げた課題の)リストの中には、どうすれば若者とコミュニケーションを取れるのか、そして、どうすれば若い人材を確保できるのかという点も含まれていた。テクノロジーはもちろん重要だけれど、それに重きを置いたペアは多くなかった」
私たちの研究によれば、リバースメンタリングには、主に4つの恩恵が期待できる。