
多くの企業が、顧客がすべての体験を終えた後に、オンラインレビューの投稿や定期購入などを促しているが、それは必ずしも有効ではない。顧客体験をカスタマー・バリューチェーンという一連の流れで考えたとき、彼らの満足度はその時々で大きく変動しているからだ。顧客にポジティブな行動を促したいのであれば、商品・サービスの評価を完璧なタイミングで実施してもらうことが重要だと筆者は言う。
自社のネットプロモータースコア(NPS。ブランドや製品・サービスを他者に推奨したいと望む顧客の比率)を高めるための、確実な方法がある。同時に、顧客アンケートを活用して、自社のオペレーション上の弱点を学ぶための確実な方法もある。
両方でカギとなるのは、顧客に自社を評価してもらう機会を「完璧なタイミング」で提供することだ。
NPSを含めて、ほとんどの顧客アンケートは、購入や消費体験の最終時点で実施されている。小売企業は、購入された後にアンケートを送る。製造企業は、顧客が製品を使うまで1週間ほど待ってからアンケートを行う。ホテルが宿泊客にアンケートを提示するのは通常、チェックアウト時か、その数日後だ。
消費者にすべてのプロセスを体験してもらった後に、総合的な体験を評価してもらおうという考え方が、その根底にはある。
だが、顧客の全体験を一つの略式評価でひとくくりにすることは、機会の損失につながる。顧客は製品・サービスを購入し、使用し、処分する一連のプロセス(いわゆるカスタマー・バリューチェーン)を通して、どんなステップを踏むのか。この点を考え、プロセス中の異なるさまざまな場面でアンケートに記入してもらうというやり方を検討することは、有益である。
たとえばホテルの宿泊客に、体験について訊ねたいとしよう。その客は次の場面を経てきたはずだ。どのホテルに泊まるかを選択し、部屋を予約し、クレジットカード番号を提示する。現地に移動し、チェックインし、部屋に滞在する。ホテル内のレストランで食事もしたかもしれない。そして部屋から退出し、チェックアウトし、宿泊料を支払う。
これらのうち、いくつかの場面では喜びを感じ、他の場面では苛立ちを覚え、そのどちらにも該当しない場面もある、というのが通常であろう。
自社のカスタマー・バリューチェーンにおける諸活動を3種類に分類することは、どんなビジネスにおいても可能であり、必須だ。すなわち、価値創出、価値獲得(マネタイズ)、価値毀損である。