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性別や国籍の多様性をどう担保するかが議論される機会は増えてきたが、年齢のバイアスが職場にもたらす影響も重大だ。年を取るほど適応力や学習意欲が衰えると考えられており、ベテランの存在は軽視される傾向にある。だが、年齢だけが能力を左右することなどない。企業が年長者を積極的に採用することは、社会貢献にとどまらず、組織に多様な視点をもたらし、直接的な収益増にも貢献する。


 ジェンダー人種文化など、職場でのバイアスについては多くの議論があり、それぞれ重要な理由がある。しかし、特に重要で問題が多いのは、年齢のバイアスだ。私たちは人を年齢で評価しがちだが、これは現代の職場で大きな課題になっている。

 筆者は数年前、デロイトのリサーチで、約1万社に「年齢はあなたの組織にとって競争上の強みか、それとも弱みか?」と質問した。その回答に驚く人は、おそらくいないだろう。3分の2以上の企業が、年齢が高いことは競争上の弱みだと考えているのだ。これは、45~74歳の3分の2が年齢に関する差別を経験したことがあるという、全米退職者協会(AARP)の調査結果と重なる。

 言い換えれば、年を取るほど、若い同僚よりも能力が低く、適応力が劣り、新しいことに取り組む意欲が乏しいと思われがちだ。

 この問題については近年、さまざまな指摘がなされている。労働人口の高齢化が急速に進んでいるからだ。

 60歳以上の人口は、2020年末までに5歳未満を上回る見込みだ。2025年には、米国と英国の労働人口の25%は55歳を超えるだろう。55歳以上の労働人口は、世界のほぼすべての国で急増している。

 米国では2018年以降、求人数が求職者数を上回っている。その主な理由は、ベビーブーム世代が次々に退職年齢に達し、ミレニアル世代がその穴を埋めようにも追いつかないことだ。