
従業員のエンゲージメントが高まると、チームや組織のパフォーマンスが向上することはよく知られている。ただ筆者らの調査により、多くのチームでは見かけと実際のエンゲージメントに乖離があることが判明した。一見すると職場に積極的に関与しているように見えるが、個人のキャリアアップに対する関心は高い一方で、同僚や上司には無関心であるケースが多い。本稿では、こうした「エンゲージメントもどき」の状態を招く3つの兆候を紹介する。
最近、ADPリサーチ・インスティテュートが世界規模で実施した調査によれば、自分が職場でチームの一員だと感じている人は、そうでない人に比べて、仕事においてエンゲージメントを感じている確率が2倍に上るという(複数のチームの一員だと感じている人は、その確率がさらに高い)。インドやサウジアラビアなど、自分がチームの一員だと感じている働き手が多い国では、エンゲージメントの水準が高いこともわかった。
成果を向上させたいリーダーは、エンゲージメントがチームのあり方と密接に結びついていることを理解する必要がある。よく知られているように、強いエンゲージメントを抱いている働き手は生産性も高いからだ。
しかし、私たちがオラクルと「エンゲージ・フォー・サクセス」(職場におけるエンゲージメントの向上を目指す英国の団体)の依頼で実施した調査によると、多くのチームでは見かけほどエンゲージメントが高くないらしい。
私たちは3年かけて、41の職場チームを対象に、リーダーへの聞き取り調査や座談会形式の意見聴取、ミーティングの観察、エンゲージメントに関する指標の収集を実施した。調査対象は、運輸、行政、医療、公益(電気・ガス・水道)、化学、テクノロジー、非営利など、9分野の組織だ。
この研究や、私たちのその他の研究によれば、すべてのチームのおよそ3分の1は、言ってみれば「エンゲージメントもどき」(pseudo-engaged)の状態にある。
指標を見る限りはエンゲージメントが高いように見えるし、経営層の目にもそのように映っている。働き手はたいてい現在の職に満足していて、職場に積極的に関わる姿勢が見られる。ほかの人たちに就職先として自社を勧めることにも躊躇がない。ところが、ていねいに観察すると、エンゲージメントの欠如を物語る要素も見えてくる。同僚への無関心や上司への不誠実な姿勢などがそうだ。
なぜ、このように矛盾した状況が生まれるのか。チームのメンバーは、個人レベルでは高度なエンゲージメントを抱いていて、自分のキャリアを前進させたいという思いが強いが、チームへの関心が乏しいのだ。
手ごわい難題に取り組もうとするマネジャーやリーダーにとっては、現状を正しく理解することが大きな助けになる。このケースでは、以下の3つの兆候に注意しよう。