
大学に通うために奨学金を受けて、その返済に苦しむ人は多い。やりたい仕事よりも給料の高い仕事に就くことを優先したり、日々の生活を送るだけで精一杯になったりするケースもある。筆者は、高等教育を受けるリスクを学生だけに負わせる現状を問題視して、学費の「出世払い」を提案する。そして自身がCEOを務めるラムダ・スクールでは、学費の出世払いを採用している。
2014年、筆者はユタ州にスタートアップを立ち上げた。スタッフは燃えており、できる限りの時間と資金と努力を投入する覚悟だった。
スタートアップで働く以上、誰もが大きなリスクを負っている。だが、あるスタッフのリスクは格別に大きかった。法学位を取ってから7年経っても、20万ドルの学費ローンを抱えていたのだ。家を買うこともできず、もっと給料のいい仕事を見つけるために、彼は独学でプログラミングを身に付けた。
これは、けっして珍しい話ではない。むしろ、「もっと苦労している人を知っている」と思う読者もいるだろう。「私のほうが大変だ」と思う人もいるかもしれない。だが、彼のケースを紹介したのは、それが筆者のミッションの中核となるアイデアをもたらす、出来事の一つとなったからだ。
高等教育のリスクに関する方程式には、大きな欠陥がある。教育機関側ではなく、学生側が負うリスクが圧倒的に大きいのだ。
学生たちは、大きな夢を持ち、できる限り最高学府に入り、好きなことを学び、そのために何万ドル(場合によっては何十万ドル)も費やすことを期待され、奨励される。現在、学生の約70%が借金を抱えている。米国全体で計4400万人が1兆5000億ドルの借金を負っている。
2年前、筆者はラムダ・スクールを立ち上げた。その背景には、リスクを取り除き、学生と学校のインセンティブを一致させれば、キャリアと所得階層の移動を民主化できるという思いがあった。
高等教育を受けた学生にとって、主なリスクは3つある。金銭的なコスト、アクセス、そして結果だ。それぞれを切り離して、物事の流れを逆にすれば、従来とは大きく異なる教育を構築することができる。