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ビジネスを取り巻く環境が大きく変化するなか、企業も政府も生まれ変わり、イノベーションを起こすことが不可欠である。だが実際には、その場しのぎの対応を繰り返し、脅威にさらされ続けているのが現状だ。筆者はその理由として、過去に強みを発揮したマネジメントプロセスを見直さず、踏襲し続ける点を挙げる。本稿では、変革を目指す伝統企業が陥りがちな3つの落とし穴を示す。


 いま多くの企業と政府は、数世紀に1回あるかという大激変に直面している。テクノロジーや流通チャネルや競争環境のいずれかに変化が起きているだけではない。すべてが同時に、根本から変わりつつあるのだ。この状況は、ビジネスと国防のあり方を一変させはじめている。

 このような時代には、既存の戦略と組織構造のままではスピーディーに動くことができず、新しい課題に対処するためのイノベーションを起こせる人材やテクノロジーを活用できない。大激変にさらされ続けている大企業は、そのことに気づきはじめた。

 今日の大企業は、自分たちが変わらなくてはならないとわかっている。しかし、往々にして場当たり的な対応しかできない。新しい問題が持ち上がるたびに対策を講じるが、問題の根底にある原因が理解できていないために、モグラ叩きのような状態に陥っているのだ。

 企業と政府機関は、この状況に終止符を打つべきである。さもなければ、悲惨な結果が待っている。

 では、どうすべきなのか。しかるべきマインドセット、組織文化、プロセスを築けばよい。私はそれらを「イノベーション・ドクトリン」という言葉で表現している。だが、それを実践する前に、今日の組織が陥る典型的な落とし穴を知っておくべきだろう。

 私は先頃、数日にわたり、ある老舗の大企業を訪ねた。

 今日の大企業のほとんどがそうであるように、この会社も新しい外的な脅威への対処を迫られていた。会社を取り巻く状況は急速に変化し続けていた。しかし、脅威に対処するうえで最大の障害は、内部の問題だった。以前は強みだった要素が、いまは新しい試練に対処する能力を妨げていたのである。その要素とは、優れたマネジメントプロセスである。