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企業の採用担当者は、自社が求めている人材と、大卒者の能力との間に大きなギャップがあると感じている。そして、高等教育機関はその隔たりを埋める努力を怠っている。そもそも、学生が大学に何を求めているのか、すなわち彼らの「片付けるべき用事」(Job to Be Done)は何かを理解していない。筆者らは、学生が要求する5つのジョブを示したうえで、教育機関がいかなる対策を取るべきかを提案する。


 雇用者は、企業側の求めるスキルと就職希望者がもたらすものの大きな隔たりに、驚きを隠さない。

 たとえば世界経済フォーラムの調査によると、デジタル関連の人材が十分にいると考える企業は30%に満たないし、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の調査では、適切なソフトスキル、すなわちチームワークやコミュニケーション能力、適応力などを兼ね備えた志望者を見つけるのに、管理職の89%が苦労しているという。

 高等教育機関の側は、このギャップを埋める努力をしていない。驚くほどの数の学生が大学でほとんど何も学ばず、実に40%もの学生は、4年間のプログラムを6年間でも修了できずにいる。

 この情けない結果の理由の一つは、学生が大学に行くことで「何を成し遂げたいと思っているのか」を、教育機関が理解していないことだ。言い方を換えると、入学時の学生の「片付けるべき用事」(Job to Be Done)を考慮していないのだ。「ジョブ理論」を生み出したことで名高い、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授は著書『ジョブ理論』で、「私たちは商品を買うとき、基本的に、あるジョブを成し遂げるためにそれを『雇う』。すなわち、人生のある状況における進歩を求めているのである」と述べている。

 ジョブ理論は、本稿執筆陣の一人(ボブ)が1990年代半ばから、クリステンセンとともに長年かけて行った研究から生まれた。また執筆陣のもう一人(マイケル)は、2007年にクリステンセン・インスティテュートをクリステンセンと共同設立し、2008年に彼との共著Disrupting Classを出版して以来、クリステンセンの研究を教育部門に応用している。

 この理論の価値は、ある状況で人が(言葉にするだけでなく)実際に何をするかという、選択の動機に焦点を当てることで予測するところにある。突き詰めると、人が商品やサービスを買うのは、それそのものを手に入れたいからではなく、その人の人生で何かを成し遂げるためである。この真理について、亡きハーバード・ビジネス・スクール教授セオドア・レビットは、人は4分の1インチのドリルがほしいのではなく、4分の1インチの穴を開けたいのだと言った。

 私たちがこれまで数年かけて実施した調査では、何らかの形の高等教育機関(4年制大学、コミュニティカレッジ、通信制大学、コーディングを学ぶブートキャンプなど)に入ることを決めた200人以上の学生から詳細に話を聞き、データを分析し、彼らが高等教育を「雇う」動機となった中心的なジョブを明らかにした。

 私たちは、大学に入る目的として5つのジョブを発見した。その1つひとつに、機能的な動機(もう1つ学位を取れば、そのコストに見合うほど給料が上がる)から感情的・社会的な動機まで、その人を押したり引いたりして決断を促す、さまざまな力が働いていた。

 以下、その5つのジョブを挙げよう。