
どんなに素晴らしい戦略を立案しても、実行されなければ何の価値も生み出さない。当然のように聞こえるかもしれないが、多くの企業がその状況に陥っている。戦略をお題目に終わらせることなく、一人ひとりのアクションに落とし込むために、どうすればよいのか。筆者は、5つのシンプルな指針を提示する。
いかなる調査においても、練り上げられた戦略の実行は、経営幹部が解決できない課題として挙げられている。経営幹部は、自分たちでは正しく実行できないということを認識はしている。取締役会で戦略を策定することと、実際に組織の全階層で実行させることは、まったくの別物である。
ある石油・ガス会社の例を挙げよう。仮にパシフィックと呼ぶことにする。同社の戦略実行に係る問題は、取締役や経営陣が香港に集まって行われた「戦略合宿」に始まった。
取締役6人と経営陣8人から成るグループが3日間にわたってプレゼンテーションを聞き、財務状況を確認し、そして26個の「戦略ステートメント」を策定した。この戦略策定に際しては、論理的なフレームワークは使われず、詳細については、その場に出席したメンバーだけで熟考された。
その後、12ヵ月が過ぎても、ほとんど何も実行に移されなかった。同様の出来事が起きたのは2年連続である。CEOは、この状況をどうにかしなくてはならないと決断した。
私が戦略コンサルタントとして雇用されたのは、このタイミングだった。私は、彼らの言う「戦略」に目を通して、言葉の使い方が曖昧であることに気づいた――。
これは珍しいことではない。実現したら素晴らしいであろう、さまざまな結果(たとえば「~を営む企業になる」)や目標(たとえば「~に真摯に取り組む従業員」)が散りばめられている。しかし、リストはおおむね、コーポレートレベルのプログラムに関する記述で成り立っている。たとえば「~と戦略的連携体制に入る」という類のものだ。
問題は、「パシフィックは実際に業績を向上させるために、この戦略をどのように推進できるだろうか」ということだった。同社がこの問いに対する答えを探すための支援をする中で、私が指針とした、いくつかのガイドラインを紹介しよう。