LARRY WASHBURN/GETTY IMAGES

ビジネスの発展とテクノロジーの進歩がより密接に関連する中、雇用者はこれまで以上に科学や数学への理解を求めており、STEM(科学、技術、工学、数学)教育の重要性がより高まっている。だが、学生たちの数学に対する関心は低く、「数学嫌い」という人も少なくない。本稿では、この問題を解決するための具体的なステップを提示する。


 競争の激しいグローバル市場では、STEM(Science〔科学〕、Technology〔技術〕、Engineering〔工学〕、Mathematics〔数学〕)分野のキャリアの戦略的な重要性が急速に高まっており長年指摘されてきた米国人の数学嫌いが、かつてないほど問題になっている。数学の能力が高い学生が演算やコンピュータに関連する仕事を敬遠することは、米国の労働力を弱体化させ、グローバル経済の中で後退させる。

 数学が何となく嫌いだ、よくわからないという不安は、大学生の専攻やキャリアの選択に影響を及ぼす。私は認知科学者として、STEMの分野で成功する能力を持つ学生が、その可能性を逃すのではないかと懸念している。

 さらに、若い女性の地位向上に力を入れているバーナード・カレッジの学長として、女性は男性よりも数学嫌いの傾向が高く、数学の能力に自信がないという事実も懸念している。STEMの多くの分野で女性が軽視される理由の一つも、そこにあるだろう。

 数学嫌いは、男女とも小さい頃に始まる。私たちの研究では、小学2年生の時点で半分近くの子どもが、数学に対して「やや不安」から「きわめて不安」と答えている。米国の4年制大学では推定で学生の4人に1人が、数学に「やや不安」あるいは「かなり不安」を感じている。別の研究によると、米国の大学生の11%は、助言が必要なほど深刻な不安を抱えている。

 したがって、米国労働統計局によると数学が重視される職種の雇用は2016~26年に28%増える見込みだが(雇用全体の平均よりもはるかに急速な伸びだ)、私の研究を含むいくつかの分析から考えると、数学嫌いに対する取り組みは十分ではない。米国人の約93%が、数学にある程度の不安を感じているのだ。数字や計算のことを考えるだけでも嫌だという人も多く、数学の授業で困惑した個人的な経験──「数学トラウマ」──がそれに輪をかける。

 この不安を解消して、米国の若者がSTEM分野の仕事に必要な力をつける機会を、(敬遠するのではなく)積極的に求めるようにするために、何ができるだろうか。