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組織文化の変革は本当に難しい。トップでメッセージを発すると従業員が動き出すということはなく、地道な取り組みが不可欠だ。変革の手法としてさまざまな方法論が示されるなか、米国の医療機関ノーヴァント・ヘルスは、読書会を活用してそれを実践した珍しいケースである。本稿では、同院がどのような読書会を開催しており、いかなる成果を上げているかが語られる。


 組織文化を変えるのは難しいことだが、変化が起こりにくい医療の現場では、とりわけ大きな課題である。ノースカロライナで15の医療施設を運営する我々ノーヴァント・ヘルス(Novant Health)では、組織文化の改革に有効な、意外とも言えるツールを見つけた。それは、読書会である。

 当院では、5年前からノーヴァント・ヘルス・リーズ(Novant Health Reads)という無料の読書プログラムを提供しており、2万8000名のメンバーが参加している。職種・役職を問わず、どのスタッフも参加でき、患者ケアに関して、また、人としてプロフェッショナルとして自己啓発につながるような本を一緒に読み、そのテーマについて話し合う。本は、医療従事者であるがゆえに抱える問題に効果的で、彼らに響くようなものを入念に選んでいる。

 各会のハイライトとして、本の著者を招いて基調講演をしていただき、それをライブストリーミングしたり、録画したりして、どのメンバーも観られるようにしてきた。選ばれたテーマに関するコンテンツの提供も無償で行っている。

 ブッククラブは多くの企業で導入され、従業員や幹部に本を配り、補完的な教育ツールとして使用されている。なかには一歩進んで、全社的な討論会を実施している企業もあるが、当院のプログラムが単なるブッククラブや読書討論会と一線を画しているのは、取り上げる本の入念な選定と、その内容を組織に活かす作業を行っているからに他ならない。

 こうした読書会は通常、戦略上重要な特定の能力(リーダーシップや営業スキルなど)を磨くために行われる場合が多いのだが、当院では、我々が行おうとしている改革にスタッフに取り組んでもらいたいという意図の下で、組織のビジョンに沿った著名な作家の視点に触れさせている。我々の業務を行うためだけでなく、役職にかかわらず、スタッフが個人レベルでチームの人たちに影響を与えられるという信念の下、本を選ぶようにしているのだ。