2020年春、いよいよ日本で5G(第5世代移動通信システム)サービスが始まります。1980年代の1Gから約10年ごとにシステムが革新されて来て、5Gに。そこで今月号は、5Gで迎える「常時接続の時代にビジネスはどう変わる」というサブタイトルで、「顧客体験は進化する」を特集しました。
特集1番目の論文は、マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアパートナー野中賢治氏が、5Gの技術革新の概要から経済効果までを総括して、「5Gでいかに経営は変わるのか」を論じます。現状の4Gに対して「超高速通信」「超低遅延」「多数同時接続」を実現する5G。その効果は、2035年までに世界全体で13.2兆ドルの価値を創出すると分析します。
その過程で顧客体験はいかに進化するのかを、中国ハイアールや米テスラ等の先端事例で考察したうえで、マーケット・顧客、エコシステム、ビジネスモデルの3つの切り口から、実際に5Gを活用してビジネスを再構築する際の重要ポイントを指摘します。
特集2番目の論文は、ペンシルバニア大学ウォートンスクール教授らが、常時接続環境で勝ち残るための「コネクテッド戦略」を提唱。プリンターのインク切れという日常的な出来事をもとに、顧客との関係をより密着した、より継続的なものにしていくための4つの戦略を、わかりやすく説明しています。
5GはSaaS(Software as a Service)の流れを加速します。そのSaaSの社会への浸透を一つの要因として、今日、多くの産業・企業で導入が進むサブスクリプションモデル。これらのビジネス変化を当事者の一人として主導してきた元マルケト社長の福田康隆氏が、顧客とつながり続ける時代の販売戦略を論じるのが特集3です。その実践策を、自社の企業文化とも称する「カスタマーサクセス」の視点から論じています。
特集4番目の論文は実践論。国内外に絶大な人気を誇るテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが、どのようにしてデジタルマーケティングを向上させ、来場者一人ひとりの顧客体験を高めているかを、デジタルマーケティング マネージャーの柿丸繁氏が詳述しています。
特集5番目は、進化するテクノロジーをいかに顧客との関係強化に結実させていくかについて、CRM、フィールドセールスとインサイドセールスの協働、AI活用の点から論じる3つの小論文を掲載しています。
そして最後に、特集を貫くバックボーンとして、「顧客との関係はどうあるべきか」について、セオドア・レビットの名著論文を再掲しました。
本誌後半では、毎年恒例の「世界のCEOベスト100」を例年より1カ月繰り上げて掲載しました。日本からはシスメックス、日本電産、ファーストリテイリング、ソフトバンクグループの常連組に加えて、新たに花王、資生堂、ユニ・チャームのCEOがランクイン。近年、日本ではガバナンス改革が続き、CEOと取締役会の関係が見直されている中、ランキングに続く論文では、米国における両者の関係を論じており、参考になるかと存じます。