
B2Cビジネスを展開する企業にとって、ECプラットフォーム上で顧客の購買意欲を刺激する工夫が不可欠である。ただし、何億種類もの商品が展開される環境において、単に情報量を増やしても大した効果は期待できない。そこでは、顧客体験を充実させるデザインが求められる。本稿では、EC事業で売れる商品ページを構築するうえで有効な3つのステップが示される。
アマゾン・ドット・コムは、ブランドの規模や商品の性格を問わず、毎日何百万人もの潜在顧客がアクセスする「店頭」を提供している。ただし、何億種類もの商品が出品されるため、競争は熾烈だ。売上げは、商品そのものがいかに優れているかだけではなく、商品ページを訪れた人を買い手に変えるような顧客体験を、どれだけ効果的に創出できるかにかかっている。
問題は、いかにしてアマゾンのサイト上で、そうした顧客体験を創出するかだ。
我々の研究は、商品ページのコンテンツを周到に編集することが、売上げを押し上げるカギになることを示している。
ここで重要なのは、オンラインでの顧客体験は、単に商品情報を伝えれば事足りるわけではないということだ。加えて、商品ページを見ている人を楽しませ、人間味があり、現実世界で商品が喚起する感覚体験を再現できるものでなければならない。さらに、何百何千種類もの商品を抱えていれば、商品ページのデザインを1つのパターンで済ませたくなるかもしれないが、研究では同じパターンのデザインではもはや効果がないことがわかっている。
アマゾンで成功するには、顧客が商品やブランドを最も効果的に体験できるページをデザインすることが必要だ。研究によると、最も顧客の心をつかむページのデザインは、2つの重要な基準に依拠している。
(1)ブランドの信頼性
(2)顧客が商品を直接体験(触る、着るなど)せずに、ページを読むだけで商品を評価できる度合い
我々はそれを念頭に置いて、アマゾンのページにおいて、ある1つのデザイン要素が効果的に使用された場合、購買意欲を10%まで向上させることを発見した。競争の激しい、今日のオンライン小売環境では、かなりの数字である。
我々は具体的なブランドと商品のページをデザインする最善の方法を研究するために、16のラボ実験と、1つのフィールド実験を行った。
ラボ実験では、タグチメソッドを実験計画に利用し、実在する16の商品について、13のデザイン要素(画像サイズ、テキストの言語様式、説明の詳細、商品動画など)の効果を検証した。商品は実在する11のブランドの商品で、アマゾンに似せた256の商品ページを作成し、コントロールされたラボ環境で実験を行った。1万人以上の参加者を募り、実物そっくりの商品ページを一人につき一つ見てもらい、ページをどう認識したか、そして商品を購入する可能性があるかどうかを質問した。
我々はこれらの実験を通して、オンラインの顧客体験には、情報、楽しさ、ソーシャル、感覚という4つの側面があることがわかった。一般に購買に最も強く影響するのは楽しさだが(以下、情報、ソーシャル、感覚の順)、それぞれの重要性は具体的な商品やブランドによって違う。
たとえば、顧客が事実に関する情報を評価して購入する「検索型商品」は、情報に関わる体験が多いほど売上げは増え、ソーシャルな体験(ウェブページの温かみ、親しみやすさ、人間味の強調)は売上げを抑制することがある。対照的に、一般に顧客が実際に商品を試す必要がある「体験型商品」では、ソーシャルな体験や感覚に関する体験が多いほうが有利になる。
我々は、パートナー企業の協力によってアマゾン上でフィールド実験を行い、実際の売上げを分析し、いくつかのラボ実験の結果を確認した。
まず、パートナー企業の商品リストから、特徴が類似していて、過去の売上げ傾向が似ている3つの検索型商品(ワイヤレスルーター)を選び出した。そして、1つの商品ページは情報を充実させ、もう1つはソーシャル面に力を入れ、3つ目は対照条件としてそのまま残した。その後、4週間にわたって、我々は3つの商品の毎日の売上げを観察した。対応する差分の差分法により、ラボ実験で得られた知見が実証された。検索型商品は、情報に関する体験の豊かさが有利に働き、ソーシャルな体験の豊かさは有利に働かなかった。
我々は研究結果から、わずか3つのステップでアマゾンのようなオンライン小売環境で売上げを伸ばすことができる「デザインガイドライン」を作成した。