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企業にとってダイバーシティ&インクルージョンの推進は必須である。義務や責任という枠を超えて、従業員の多様性が業績向上に直結するという結果も増えているが、どうすればそれを実現できるかについて、ほとんどの組織がわかっていない。全米プロゴルフ協会(PGA)もその一つであった。ゴルフが典型的な白人のスポーツとして認識されている中、PGAはデータ主導のアプローチを採用することで、黒人を含めた多様な人材の獲得に成功した。本稿では、他業界でも通用する汎用的な方法論が示される。


 今後25年以内に、有色人種の人口は米国の全人口の過半数を占めると予想されている。カギを握るこの層の人口が急増するにつれて、大小を問わず米国中の企業が変化に対応した商品やサービス、体験を開発すべく、多様な人材を採用する必要性を感じている。

 さらにある調査によると、多様な従業員を抱える企業は、そうでない企業よりも優れた業績とイノベーションを実現している。2018年のマッキンゼーのレポートによれば、従業員のダイバーシティで上位25%に入る企業は、そうでない企業よりも33%も高い財務実績を上げている。

 しかし、従業員の多様性がより必要な理由をわかっていても、どのようにしてそれを実現できるかは、ほとんどの組織がわかっていない。全米プロゴルフ協会(PGA)も、そんな組織の一つだった。

 PGAは一般の人々が抱くゴルフのイメージに悩まされてきた。ゴルフは主に白人のスポーツと見なされることが多く、ゴルフに関わる人が少ないコミュニティから人材を採用することが難しい。歴史的に、ゴルフに興味のある非白人が参入しようとすると、数多くの障壁にぶつかった。そこには、練習を始めたり用具を買ったりするための金銭的なハードルも含まれる。

 PGAはこれまでも、多様な人材を引きつけるためのプログラムを設けてきた。たとえばPGAワークスというプログラムでは、多様な背景を持つ人々がフェローシップ制度や他の経路による新規採用に応募するように、積極的に呼びかけている。だが、まだ道半ばである。

 PGAは最近、ジョプウェル(Jopwell)と手を結ぶことにした。ジョプウェルとは、黒人やラテンアメリカ系、ネイティブアメリカンの学生や専門職に就く人たちを対象にしたキャリアアップ・プラットフォームである。この提携は、PGAが新たな戦略的手段を見極めるためのさまざまなパートナーシップの一つであり、その目的はゴルフに関わる人が少ないコミュニティの生の声を聞き、このコミュニティの人材を巻き込み、採用し、維持することである。

 PGAが抱えていたのは、ある意味でゴルフ特有の問題である。しかし包摂性(インクルージョン)や多様性(ダイバーシティ)をさらに高めたいと望むだけの段階から、実際に多様な人材を雇う段階へ移行しようとしている組織が、PGAの経験から学べることは十分にある。