変化を生み出すために、まずデータから始める

 PGAから委託された後、ジョプウェルはゴルフ業界に対するイメージについて、直接自社のコミュニティにアンケート調査をして声を集めた。アンケートの中には、ゴルフ業界に入る際の障壁や、業界内でキャリアを築くチャンスに関する質問も含まれている(ジョプウェルのコミュニティはJopwell.comに会員プロフィールを登録し、ジョプウェルからの連絡を受け取ることを選んだ黒人、ラテンアメリカ系、ネイティブ・アメリカンの学生および専門職に従事する人々で構成されている)。

 ジョプウェルはスポーツや金融、マーケティングなど、興味のある分野を記入してもらい、その回答をもとに調査に参加したコミュニティのメンバーをセグメントに分けた(調査への参加を促すために、参加者476人のうち10人にギフトカード100ドル分を贈呈した)。

 こうして集めたデータから浮き彫りになったのは、ゴルフに興味がないのではなく、PGAでキャリアを築く機会があると知らないということだった。これは心強い状況である。キャリアの機会があるという認識を高めようと、PGAが継続的に行ってきた施策が適切だったことを証明できたからだ。

 重要な発見には、次のようなことが含まれる。

・ゴルフ業界の求人に応募しない主な障壁として、前述の認識の欠如(27%)と業界関係者へのアクセスの欠如(26%)が上位2つに挙がった。

・回答者の3分の2がゴルフ業界はダイバーシティやインクルージョンに欠けると思っている一方で、回答者の大半はゴルフ業界でのキャリアは楽しくクールで、やりがいがあるだろうと考えている。

・キャリアチャンスがあることをさらに周知させるために、できることがもっとあることもPGAは発見した。なぜ応募しなかったのかという質問に対し、回答者の51%はゴルフまたはビジネスに関する経験や知識が必要だと思ったからだと答え、76%はPGAにキャリアチャンスがあることそのものを知らなかった。

・しかし、PGAが多様な背景を持つプロフェッショナルを採用したいことを明示すると、応募する可能性が46%から64%に上がった。

 このような調査結果を意外だと受け止めるか、予想通りと受け止めるかはさておき、正確なデータの存在はダイバーシティ&インクルージョンの取り組みすべてに不可欠である。

 たいていの場合、どこかで耳にしたエピソードをもとに、多様な背景を持つ人々が求人に応募しない理由を直観的に理解しているだろう。しかし実際のデータポイントを収集すれば、決定権を持つリーダーたちを動機づけ、正しいことを裏づけ、間違ったときにはそれを指摘できるようになるし、リーダーたちが行動を起こしやすくなる。

 多くの会社が、従業員をいまの時代にふさわしく多様化しようとして、同じような問題にぶつかっている。その場合、採用したい応募者層の話を聞く時間をつくれば、得るものがあるはずだ。