セルフプロモーションにおけるこの差は、何によって引き起こされたのだろうか。一つの仮説としては、単純に女性が男性よりも自分のパフォーマンスに自信がない、ということが考えられる。調査に参加した女性たちは、たしかに自分の成績に自信がなく(すなわち、実際よりも正答数が少ないと思っていた)、男性は自信過剰であった。

 しかし、話がこれで終わりなら、実際の成績がどうだったかを明らかにすれば、セルフプロモーションにおける男女格差は取り除けるはずだ。ところが、ワーカーたちに自分と他の参加者の実際の成績を教えたあと、再度セルフプロモーションの質問をしたところ、男女格差は依然として縮まらなかった。

 もう一つの仮説は、戦略的インセンティブとの関係である。ワーカーたちは、セルフプロモーションが採否・報酬を左右することがわかっていた。男性は単純に、そのシステムをうまく利用しようと思ったのかもしれない。セルフプロモーション格差は、男性が高い報酬を得ようとして、女性よりも高い自己評価をした結果なのだろうか。

 この疑問を解くために、別バージョンの調査、「非公開」バージョンを実施した。今回もワーカーに自己採点させたが、その回答は公開しないとした。雇用者に伝えないので、採点することへの金銭的インセンティブはない。すなわち、セルフプロモーションを行う戦略的理由がない。

 雇用者に自分をよく見せる理由がないと、たしかに全体的にセルフプロモーションは減少した。ところが、男女が同じようにセルフプロモーションのレベルを下げたため、男女格差は縮まらなかった。

 男女格差を埋めようとして実施した他の調査も失敗に終わった。「曖昧」バージョンでは、雇用者の存在を復活させたが、曖昧さを加えた。つまり、自己採点だけでなく実際の出来を雇用者に知らせる場合があると、ワーカーに伝えた。過剰なセルフプロモーションをした場合、それが「バレる」可能性があるということだ。

 また、「非公開(他者の情報)」バージョンでは、雇用者をなくし、非公開の設定に戻したが、透明性を高めた。すなわち、ワーカーたちに、実際の出来と同等の自己採点をした他者の自己採点の平均値を明かした。

 だが、どちらの方法でもセルフプロモーションの男女格差は埋まらず、我々は、セルフプロモーションの格差が曖昧、透明な環境でも変わらないと結論づけた。

 結果的に、試したすべての設定で、セルフプロモーションにおける大きな男女格差が確認された。つまり、女性は共通して、同等の成績の男性に比べて、自分の過去の成績や将来の能力に対して低い評価を下した。我々が実施した多様な調査バージョンによって、この男女格差は、自信や戦略的インセンティブによって引き起こされたのではないこと、曖昧さ、高い透明性に対しても堅牢であることが明らかになった。

 このやっかいなまでに頑固な男女格差は、何によるものなのだろうか。現時点では、推測することしかできない。

 セルフプロモーションに関するこれまでの研究では、しっぺ返しに対する性差の可能性が挙げられている。しっぺ返しとは、過剰にセルフプロモーションをしたことで罰せられることだ。

 過度なセルフプロモーションを行った女性が男性よりも罰せられやすいとしたら、女性が男性よりも、自分のパフォーマンスを過度に高く伝えるリスクを身に滲みて感じていてもおかしくない。もしそう感じているのなら、雇用者が性別を知らされない(公開と曖昧バージョン)、あるいは雇用者の心配をしなくてもよい(非公開、非公開〔他者の情報〕バージョン)調査環境でも男女格差は発生しうる。

 セルフプロモーションにおける男女格差の原因をより理解するまでは、格差を埋める方法を見つけるのは難しいかもしれない。これはすなわち、さらなる調査が必要だということだ。

 その間、セルフプロモーションを基に採用、昇進、昇給、賞与を判断している雇用者は、この研究から得た教訓を心に留めるべきだろう。女性は男性ほど自分のパフォーマンスを高く言わないかもしれないが、だからといって男性よりもパフォーマンスが劣るわけではないのだ。


HBR.org原文:Why Don't Women Self-Promote As Much As Men? December 19, 2019.

クリスティーン・エクスリー(Christine Exley)
ハーバード・ビジネス・スクール助教授。経営学部で交渉・組織・市場ユニットを担当。

ジャッド・ケスラー(Judd Kessler)
ペンシルバニア大学ウォートン・スクール准教授。ビジネスエコノミクスと公共政策学を担当。


■こちらの記事もおすすめします
女性がパーソナル・ブランドを築き、強化するための3つの方法
女性が会社と交渉する際に直面する3つの課題
「男性性を競う文化」が組織に機能不全を招く