従業員の天職探しを支援する
私たちが研究した企業は、従業員が最も達成感を味わえる職種、いわば「天職」を見つけるのを助けて、従業員のやる気を引き出していた。これは従業員の生産性を高めるだけでなく、会社に来てハッピーだと(ラッキーだとさえ)思わせる。具体的な方法は企業によって異なるが、従業員に情熱を追い求めるチャンスを与えるという点は、すべての企業に共通していた。
バイオ医薬品ベンチャーのリジェネロン製薬(Regeneron Pharmaceuticals)は、そのよい例だろう。同社のミッションは、苦しんでいる患者のために新しい医薬品を開発すること。その多くは大きな利益をもたらさないかもしれない。だが同社は、投資利益率(ROI)のような制限に縛られることなく、人々を痛みから解放することを目指している。
この純粋な目的意識は、従業員の姿勢に大きな違いをもたらしている。同社のモットー「科学を追え」も、従業員の間で大きな共感を呼んでいる。
リジェネロンの研究者たちは、特定の疾患に焦点を絞るのではなく、自分が最も関心があり、最も能力があると思う課題を探るよう背中を押されている。多くの従業員は、リジェネロンで夢の仕事を見つけたと語った。「MIT(マサチューセッツ工科大学)に戻ったような気分だ」と、あるマネジャーは言った。「自分の好奇心を満たす余裕がある」
特別なプログラムや長期休暇で、従業員の情熱を刺激する会社もある。人工知能(AI)や分析ソフトの会社SASインスティテュートのオリバー・シャベンバーガー最高執行責任者(COO)兼最高技術責任者(CTO)は、管理職にTEDトーク的なプレゼンの方法を学ばせている。プログラム参加者は、最高のアイデアを持ち寄り、型にはまらない考え方を刺激し合う。それが大きなプロジェクトの着想につながることもある。
インテュイティブ・リサーチ・アンド・テクノロジー(Intuitive Research and Technology)も、「クリエイティブ・インセンティブ・プログラム」によって、独創的な問題解決策の着想を刺激している。従業員は新しいプロダクト案(自分の業務と関係があってもなくてもよい)について目論見書を書くよう促され、会社がそのアイデアを気に入った場合は、スタートアップ資金を提供して、そのクリエイターに利益の半分を支払う。一方、ピュア保険(PURE Insurance)の「パッション・プログラム」は、従業員に年間1500ドルの予算を与えて、好きな研究をさせている。
つまり私たちが訪問した企業には、ホラー映画に出てくる長く暗い路地の行き止まりのような、従業員の活力を奪う障害は存在しない。むしろ、人材開発投資と頻繁な異動によって、自分の関心があることを探り、自分が真にワクワクできることを見つけるよう促す。会社の業績をアップする最も確実な方法は、従業員に好きな仕事を与えることだ。