従業員同士の関係づくり

 私たちが話を聞いた企業は、各部門の善意と連帯が、会社としての有効性に大きく影響を与えることに気がついていた。このため各社とも、従業員を結束させることに力を入れていた。ただし、伝統的な方法ではない。

 このプロジェクトを開始する前、人生の重大イベントや通過儀礼(結婚、誕生日、記念日など)が職場環境に与える影響はささいなものだと、私たちは考えていた。ところが、企業訪問はその考え変えた。これらの企業は、誕生日などの従業員個人にとって重要な日を祝うことは、極めて人間的なこととして大事にしていたのだ。

 考えてみるといい。私たちはプライベートでは記念日を祝福したり、誰かに共感したりするのはよい習慣だと理解している。また、他人の気持ちやニーズに配慮したり、元気づけたり、リラックスさせたり、慰めたり、助けたりすることも、よいことだと知っている。大きな事件が起きたとき、私たちはその経験をともに噛みしめて、お互いの重荷を軽くし、大切な人を慰める。

 よい組織は、よい家族のように、メンバーに対して責任を持つ。チームの間に真の仲間意識を生み出したいなら、共通の経験をつくる必要がある。

 私たちが訪れた企業は、特別な日をともに祝い、人生の重要な転機を称える。バンブーHRでは、誕生日は有給休暇だ。インソムニアック・ゲームズ(Insomniac Games)は、初めて子どもを持った従業員に特注のベビー服や、絵本、おもちゃ、新生児に関する書類を整理しておく専用ブリーフケースをプレゼントしている。

 多彩な社交イベントが開かれることも、私たちが選んだ模範的企業の特徴だった。しかもそれは、反強制的に参加させられ、楽しいフリを強いられる人為的なチームビルディングのイベントとは違うという。チームのつながりと連携を強化する(それが結束につながる)イベントが、日常的に自然発生的に生まれるのだと、ヘルス・カタリストのある従業員は語る。

 BAFでは、従業員が野球の試合を見に行ったり、コメディークラブやオフブロードウェイの舞台を見に行ったりする費用を一部負担している。また従業員が、キックボールやビーチバレー、ボウリングといったクラブに入ることを奨励し、夏のキャンプやハロウィンのパンプキン販売など、大がかりな家族向けイベントも開催している。

 リジェネロンも春のパーティー、夏のバーベキュー、派手なアロハシャツを着てくる日、年末のホリデーパーティーなどを開催しているほか、科学の進歩を祝福する全社集会を頻繁に開いている。

 こうした「課外活動」は、仕事とは無関係に見えるかもしれないし、時間の無駄だと思う人もいるだろう。しかし有意義な人間関係を築くことは、実のところ仕事に大きなプラスになる。最高の会社は、従業員の個人的な関係と絆が、チームの崩壊を防ぐ最も効果的な方法であり、チームが最高の実績を上げるためには不可欠であることを知っている。