
デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性は周知されている。にもかかわらず、なぜ多くの既存企業が実行に踏み切れていないのか。マッキンゼー・アンド・カンパニーとマッキンゼー・グローバル・インスティテュートの調査により、彼らが「デジタル・リ・インベンション」と呼ぶ変革に成功した企業は、6つの取り組みを実践していることがわかった。
蒸気機関の発明からラジアルタイヤの市場席巻まで、過去200年にわたり技術革新はビジネス環境を劇的に変えてきた。マッキンゼー・アンド・カンパニーとマッキンゼー・グローバル・インスティテュートの調査によると、デジタルトランスフォーメーション(DX)も同じくらい劇的なインパクトをもたらしている。
とりわけ、多くの業界における既存企業が、デジタル化に出遅れることで大打撃を受ける可能性があることを我々の調査は示している。デジタル変革を受け入れなかった企業は、売上げの伸張の50%を、EBIT(支払金利前税引前利益)の伸張の3分の1を失っている。
既存企業がデジタルの呪いを振り払い、収益率を上げる成長路線を再構築するのに、遅すぎることはない。競合他社よりも多くの資金をデジタルに投じる意思があり、それが可能であるならば、自社事業のポートフォリオを入れ替え、残った事業を新しいビジネスモデルで強化することにより攻勢に出られるはずだ。
さらに、既存企業にとっての賢い選択は「プラットフォーム戦略」だろう。第三者間取引、たとえばサプライヤーと消費者を仲介して価値を創造するのである。それが、破壊された業界のバリューチェーンで、より大きな価値を捉える方法につながるからだ。
我々が「デジタル・リ・インベンション(再発明)」と呼ぶ、この路線を取る利点は実証されている。にもかかわらず、実行に踏み切っている企業は少数にとどまる。
我々は2016年のデータを用いたリサーチで、リ・インベンションの方向に踏み出している会社がわずか16%であることを発見した。ここでいうリ・インベンションとは、自社のポートフォリオを再編(不採算事業を切り捨てて収益力の高い事業を拡大)し、新しいプラットフォーム・ビジネスモデルに基づく積極的なデジタル戦略に対して、競合他社よりも多くの資金をつぎ込むことを指す。2017年半ばに世界の1650社を対象に行った調査でも、デジタル・リ・インベンション路線を取っている企業は20%に満たないことが確認された。
我々が導き出した結論は、こうした警告が各方面から発せられているにもかかわらず、既存企業のほとんどは、デジタル時代にうまく対応できていないというものだった。
以上のような理由から、我々は2017年半ばの調査で、より頻繁に(そしてより収益力の高い)デジタル・リ・インベンションをどう促せばよいかに着目した。その結果、既存企業がデジタル・リ・インベンション路線を選択する確率を予想できる、統計的に有意かつ重要な6つの要素を見出した。以下、その6つを重要度の高い順で挙げる。