
他社との差別化を実現するためにはまず、独自の組織文化を定義することが不可欠だ。また、組織文化はブランド・アイデンティティと整合していなければならない。では、自分たちのアイデンティティをどう見極めればよいのか。筆者は、ブランド・アイデンティティは「破壊的」「革新的」「値頃」などの9つに分類できると言う。
社内に「よい」組織文化を築く、というだけの目標はハードルがあまりに低い。「誠実さ」や「チームワーク」といった価値観を推進している企業は、他社と何ら変わりがない。
自社の差別化につながる具体的な成果を生みたいならば、しかるべき従業員の態度と行動を醸成するために、自社独特の文化を定義する必要がある。
独特の文化を築くことは、社内的な目標にとどまるものではない。この点で優れている企業は、自社がどんな「ブランド・アイデンティティ」を志向するのかも明確にしている。つまり、顧客を含む社外の利害関係者に、自社をどう認識し、体験してもらいたいか、である。
自社のブランド・アイデンティティと文化が整合し、一体化しているならば、従業員はブランド・プロミス(ブランドが約束する価値)の実現につながる意思決定と行動を取る可能性が高い。
組織文化とブランドを結びつけるためには、やるべきことがある。はじめに、さまざまなブランド・アイデンティティのタイプを検討し、自社がどれに当てはまるのかを考えるとよい。ブランドのタイプとは、競争上のポジションを確立するための戦略アプローチが同じ、またはスタンスが似ているブランド群の分類である。
ブランドのタイプは、ブランドの「アーキタイプ」(元型)とは違う。後者は、古典的なストーリーテリングにおける人格の類型(ヒーロー、道化師、賢者など)になぞらえて、ブランドを分類するものだ。広告キャンペーンなどのコミュニケーションにおいて、物語をつくり、語り口を設定する際には、アーキタイプが役立ちうる。
一方、ここで筆者がいうブランドのタイプとは、ブランドが競争して相対的なポジショニングを行うための、戦略のあり方を指す。
たとえば、パタゴニアは持続可能性という理念を特徴とするため、「意識が高いブランド」に当てはまる。一方、新しい製品を追求するアップルは「革新的なブランド」のタイプとなる。