経営者の役割と責任は何か
編集部(以下色文字):魚谷さんは2014年に資生堂の社長に就任されて以来、「VISION 2020」をはじめとする成長戦略を提示されています。中期計画だけでなく、かなり長期の計画も示されていますが、どのような意図があるかを教えてください。

魚谷 雅彦(うおたに・まさひこ)
資生堂 代表取締役CEO
1954年、奈良県生まれ。1977年、同志社大学卒業後、ライオン歯磨(現ライオン)入社。米国コロンビア大学経営大学院にてMBAを取得。1994年、日本コカ・コーラに入社し、社長・会長を歴任。2013年に資生堂のマーケティング統括顧問に就任、2014年より現職。
資生堂 代表取締役CEO
1954年、奈良県生まれ。1977年、同志社大学卒業後、ライオン歯磨(現ライオン)入社。米国コロンビア大学経営大学院にてMBAを取得。1994年、日本コカ・コーラに入社し、社長・会長を歴任。2013年に資生堂のマーケティング統括顧問に就任、2014年より現職。
魚谷(以下略):私は、経営者が果たすべき役割と責任とは、組織が進むべき方向を示し、社員が活きいきと働ける環境をつくるための決断を下すこと、それに尽きると考えています。自分一人で新鮮なアイデアを泉のように出せるわけがなく、周囲の人たちに自発的に動いてもらわないといけません。そのためには、こちらに進もうという共通の理解があり、自分たちの判断で動いてかまわないと思える環境づくりが必要です。
売上げや利益という数字は、組織体制や風土と直結しています。組織内の考え方が多様で、立場を問わず率直な意見を述べられる闊達な雰囲気を持ち、本社と現場が一体化していれば、ほとんどの場合、結果として業績はよくなるものです。反対に、組織に強烈なヒエラルキーがあり、上から管理されて新しい発想が押さえ込まれるような風土の中では、イノベーションは起こりません。