
個人よりもチームで取り組むほうがイノベーションを生みやすい。そのことを証明する研究は多いが、筆者らの調査により、チーム作業が必ずしも有効ではないケースがあることがわかった。コラボレーションが効果を発揮するか否かは、「モジュラリティ」に大きな影響を受けるという。
個人でやるよりチームでやったほうが、画期的な発明(ブレークスルー発明)は生まれやすい――。これは広く信じられていることだ。数多く引用される技術特許や科学文献など、影響力のあるイノベーションを生み出すうえでは、個人よりもチームのほうが優れていることは、研究でも示されてきた。
だが、私たちの研究は、この問題に重大な影響を与える要因を発見した。すなわち「何を」発明するか、もっと言うと、「いくつのモジュールに分割できる発明か」によって、チームと個人のどちらが優れているかは変わってくるようなのだ。
私たちは、1985~2009年に米国特許商標庁に出願された160万3970件の技術特許(機能の発明、すなわちプロダクトや方法、機械に与えられる)と、19万8265件の意匠特許(形状の発明、すなわち顕著な視覚的構造や装飾に与えられる)を分析した。
私たちはまず、「ブレークスルー発明」の数を調べた。これは該当する商品分類で、引用された回数が上位5%に入る出願と定義した(ある発明が優れて画期的かどうかは一般に、その後の特許文献でどのくらい引用されるかによって判断される)。そのうえで、ブレークスルー発明に特許が付与されるのは、発明者が単独で取り組んだときが多いのか、それともチームで協力したときのほうが多いのかを調べた。
その結果、過去の研究と同様に、チームで取り組んだほうが、ブレークスルー技術特許が生まれる可能性は高いことがわかった。ところが意匠特許になると、コラボレーションの優位は完全に消えてしまう。ブレークスルー意匠特許が付与される可能性は、発明者が1人の場合も、複数の場合もほぼ同じだったのだ。
なぜ意匠発明では、コラボレーションの優位が消えてしまうのか。
有名な意匠を考えてみるといい。コカ・コーラのガラス瓶やiPhoneが象徴的な意味を持つようになったのは、ボトルの首の部分やフレームの角といった一部ではなく、プロダクト全体の形状が美しいからだ。すべての構成要素が相互補完的に組み合わさっているが、それぞれが全体のデザインにどのように貢献しているかは、ただちに切り離して考えることができない。
このような構成要素間の相互依存性が、発明のプロセスに大きな影響を与えると、私たちは考えている。チームで何かの形状をデザインするとき、パーツごとに分担しようとすると、全体としてまとまりのあるものを生み出すのに苦労する可能性が高い。
それは1枚の絵をチームで描こうとするようなものだ。できないことはないけれど、全員のアイデアを考慮したり、伝え合ったりするのに多くの時間とリソースを要することになるだろう。
これに対して個人発明家なら、自分の頭の中で、さまざまな可能性を評価し、試行錯誤し、取捨選択することが容易にできる。全体的なバランスが求められるデザイン(ほとんどの意匠特許がそうだ)をしようとするとき、チーム内の意思疎通や調整を図るための労力は、コラボレーションがもたらす恩恵を上回る。