●どのような問題を解決したいかを明確にする

 新しいシステムをどのようなものにすべきかを考えるうえで、最も参考になるのは、いま使っているツールに対してどのような不満を抱いているかだ。現状のツールへの不満を書き出してみよう。そのうえで、さまざまなサービスを見比べて、自分の不満を簡単に解決できそうなものを選べばよい。

 私の場合は、記事のアイデアを記録するために長年用いていた表計算ソフト、「グーグル・スプレッドシート」の不満足な点をいくつか解消したかった。具体的には、もっと大きな編集ウィンドウで作業できるようにし、項目数が多い場合にもっと手軽に扱えるようにしたいと感じていた。この問題を解決できたのが「コーダ」だった。

 ●小さく始める

 あるサービスが役に立つかどうかを知りたければ、実際に使ってみるのが一番だ。手の込んだシステムを築き、業務の多くの側面を自動化しようという壮大な計画を持っているとしても、まずは手をつけやすいところから始めよう。たとえば、タスクリストをカスタマイズして、自分が好きなように課題を分類できるようにしてもよいだろう。

 私も「コーダ」を用いたとき、最初は小さく始めた。記事のアイデアをまとめた既存の表計算ソフトをインポートし、そのうえで自分好みの表示方法をいくつか取り入れたのだ。具体的には、すべてのアイデアを一覧表示したり、特に自信があるアイデアのリストを表示したり、すでに編集者に提案済みのアイデアのリストを表示したりできるようにした。

 ●プロジェクトのタイプごとに別々のシステムをつくる

 自分独自のシステムをつくることの利点の一つは、すべてのプロジェクトで同じシステムを使う必要がないという点だ。どのようなプロジェクトに取り組むか(そして誰と仕事をするか)により、シンプルなタスクリストとデジタルメモ帳だけで十分な場合もあれば、自動化の要素を盛り込んだ、精巧な表計算ソフトが必要になる場合もある。

 私は仕事の領域ごとに、「コーダ」を用いたシステムをカスタマイズして利用している。一つの領域は、顧客への提案(責任分担の計画や予算案、提案書の草稿など)、もう一つの領域は、ウェブサイトの改善(サイトのアーキテクチャ、コンテンツ、技術面というテーマ別にセクション分けしている)、そしてもう一つの領域は、顧客となる編集者に見せるための仕事の実績だ(記事へのリンク、記事のサンプル、ソーシャルメディアの指標を別々のフォルダに収録している)。また、家族の休暇の計画を立てるため際にも「コーダ」を利用してみた(ホテルなどの予約、レストランのレビュー、活動のスケジュールなどの情報を集約する)。

 ●ほかのツールと統合する

 システムをカスタマイズすることの真の目的は、業務の一部を自動化することにある。しかし、どのくらい自動化がうまくいくかは、そのシステムをほかのツールとどのくらい統合できるかに大きく左右される。

 たとえば、私は「コーダ」で作成するアイデアリストを、ジーメール(Gmail)のアカウントと統合している。これにより、ある記事のアイデアを編集者に送信するときは、ワンクリックの操作で、関連情報をすべて盛り込んだメールの草稿ができ上がる。

 また、アプリを連携させて業務を自動化するためのツールである「ザピエル(Zapier)」を使って、「コーダ」とほかの多くのツールを統合している。たとえば、フォーム作成ツールの「ジョットフォーム(Jotform)」と「コーダ」を統合し、スマートフォンから手軽に新しいアイデアを書き込めるようにした。

 ●「脱出計画」を立てておく

 同じツールを永遠に使い続けることはありえない。そこで、新しいツールを使い始めるときは、将来ほかのツールに乗り換えるときのために、あらかじめデータを取り出す方法を確認しておいたほうがよい。取り出すべきデータは、テキストデータだけではない。私は、課題やメモや連絡内容をどのように整理しているかという情報も保存したい。

 データを取り出すためには、手作業で表計算ソフトにコピー・アンド・ペーストをするしかない場合もあるかもしれないが、データをエクスポートする方法を持っておくことは重要だ。データのバックアップを取るためにも、この作業を頻繁に行ったほうがよい。

 最近は、そのまま使える生産性向上のためのアプリやツールが山ほど登場している。自分のニーズにぴったり合わなくても、既成のツールを利用したほうが手っ取り早いと感じる人もいるだろう。しかし、自分にとって最適なシステムを構築したい人は、「コーダ」「ノーション」「エアテーブル」を利用すれば、目を見張る成果が得られる。プログラミングの専門知識がない人でも、自分のニーズに合ったアプリやシステムをつくることができるのだ。


HBR.org原文:Create a Productivity Workflow That Works for You, January 08, 2020.


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