摩擦を避けたがる

 摩擦回避の行動パターンの持ち主は、厳しい話し合いを避けるだけではない。逃避や脅しを通じて、自分が抱いている不安感を覆い隠し、みずからの恐怖心や不安感や誤りが露見することを防ごうとする。

 私がコンサルティングを担当した企業の話をしよう。私に声がかかったとき、社内の重要なチームが崩壊しかけていた。問題は、そのチームのマネジャーであるシェリー(仮名)が部下から敬遠されていることだった。

 上級幹部のブライアン(仮名)は、火種がくすぶっていることに気づいていたが、シェリーに厳しく指摘することに気が進まず、問題を放置していた。シェリーに対する不満を述べるメンバーの話を聞き、理解を示すだけで、それ以外は何もしなかった。

 やがて、チームで最も成績のよいメンバーがシェリーとブライアンの両方を飛び越えて、副社長に直談判した。なんらかの措置が講じられなければ会社を辞めると、訴えたのだ。

 摩擦回避の行動パターンが恐怖心の産物で、そのような行動が悪い結果を招くのだと理解すれば、問題に向き合いやすくなる。問題にどのように対処すべきか、誰かにアドバイスを求めてもよいだろう。不安が非常に大きければ、とりあえず行動の計画を書き出すことから始めてもよい。

 理想は、問題に直接向き合い、みずから対処することだ。たとえば、ブライアンはシェリーと話し合い、問題点を議論し、コーチングや研修などの支援を申し出ればよかった。これは、問題を生み出している人物のスキル構築を促すアプローチだ。それ以外では、シェリーのスキルが会社に最も役立つのはどの役職かを話し合い、リーダー以外の役割を担わせることを検討してもよかったかもしれない。

衝動的に行動する

 感情に突き動かされがちな人もいる。激しい怒りや苛立ちに駆られて行動したり、精査せずに新しい派手なアイデアに飛びついたりする。

 そうした行動が原因で、人間関係が壊れたり、支持を失ったり、上司の賛同を得にくくなったりしかねない。シェリーも衝動的に意見を述べる傾向があり、それが部下の感情を傷つけ、チームの土台を揺るがすときがあった。

 自分の衝動性の強さが悪い結果を招いていると思う人は、これまでの経験をじっくりと振り返り、性急な行動がどのような弊害を生んできたかを考えてみよう。今後のプロジェクトに関しては、衝動的な反応を避けるために、以下のような問いをあらかじめ検討しよう。

・計画の実行段階で最も失敗しそうなことは何か?
・見落としていることはないか?
・社内外の人たちは、どのような反応を示しそうか?
・私の言葉を聞いたり、私の指示に従ったりする人たちに、どのような経験をさせたいのか?