責任転嫁をする

 責任転嫁は、悪い行動パターンの中でも、企業の現場で最もよく見られるものだ。私たちの会社「アペリオ」の計量心理学的なデータによれば、これは問題解決がうまくいかなかったり、イノベーションが実現しにくかったりする最大の原因である。

 責任転嫁をする人は、悪い材料を誇張する傾向があり、被害者意識が強く、上司や同僚、ほかの部署に責任を押しつけたがる。

 私は以前、ピーター(仮名)というリーダーのコーチングを担当したことがある。問題を一緒に検討し始めたとき、ピーターはその問題を知らないと述べ、自分の責任ではないと言い張った。やがて、問題を認識していたことを示すメールが見つかると、言い分を変えた。「忙しかったんだ」と釈明したのだ。

 このような悪い行動パターンを断ち切るためには、その根っこにある思い込みを洗い出す必要がある。

・あなた/あなたのチームは「最善を尽くした」ので、結果に対して責任はないという思い込み。
・あなた/あなたのチームは無力で、状況をコントロールしているわけではないので、批判されるいわれはないという思い込み。
・ほかに悪者がいて、その人たちが責められるべきだという思い込み。

 思い込みを洗い出したら、次は問題解決に移る。自分の失敗を検討し、現状での制約を把握したうえで、自分の権限と影響力で何ができるかを考えよう。

部下をコントロールしたがる

 コントロールへの欲求が強い人は、失敗を回避するためにそのような行動を取っているつもりでも、周囲の見る目は違う。融通が利かない、細かいことまで指図しないと気が済まない、冷たいなどと思われる。

 ある研究機関のマネジャーは、その通りの経験をした。

 この人物が率いるチームは、非常に重要なプロジェクトに取り組んでいた。しかし、次第にマネジャーがコントロールへの欲求を強め、メンバーの仕事だったはずのことまで自分でやり始めた。その結果、メンバーは自分たちが必要とされていない、もっと言えば拒絶されていると感じるようになり、プロジェクトは目標を達成できずに終わった。

 極端な場合、コントロールへの欲求が強いリーダーの下で働いている人は、率先して行動したり、アイデアを述べたりしなくなり、有益なコメントもしなくなる。そして、なかなかスキルを育めず、辞めてしまう場合も多い。

 細部まで指図しなくては気が済まないタイプのリーダーは、肩の力を抜いて部下と話すことを心掛けよう。進捗状況の報告を受け、目標とデータを共有し、アドバイスを送る一方、メンバーに権限を持たせるべきだ。

 コントロールを弱めるためには、コミュニケーションを増やし、部下をもっと信用し、すり合わせを徹底しなくてはならない。しかし、そのような努力を払うことにより、チームの成功という大きな成果を得られる。

完璧主義になる

 最善を尽くすのは大切なことだが、常に完璧でないと気が済まない人は、締め切りに間に合わなかったり、チャンスを逃したりすることが多い。このタイプの人たちは、自分の仕事の質に満足できず、いつまでも仕事を完了できない場合もある。

 この行動パターンを克服するためには、どの水準を目指すべきかを、ほかの人たちと話し合うことが有効だ。完璧主義者は極端に厳しい目標を定めがちだが、望ましい成果やコストや完了時期について、ほかの人たちの意見を尋ねてみよう。

 仕事が50%もしくは80%仕上がった時点で、上司に確認してもらってはどうだろう。それで十分だと言われるかもしれない。

 その勇気がない人は、ささやかな実験から始めてもよい。要求水準を少しだけ緩和してみよう。その結果、困ったことが起きるだろうか。最も恐れていた事態が現実になるだろうか。

 完璧主義が人間関係に悪影響を及ぼしていないかも考えよう。あなたは、周囲の人たちにも非現実的な厳しい基準を課していないだろうか。「完璧」を要求されれば、不快に感じる人が多い。極端な場合は、あなたから離れていく人もいるだろう。

力を欲しがる

 力を欲しがる人は、たとえば対人関係でリソースをコントロールしたがる。

 そのような行動パターンを生む原因は、相手への共感の欠如、ほかの人を犠牲にしてでも自分の目標を追求しようとする姿勢、妥協を拒む態度、ほかの人を目的達成の手段とみなす発想などだ。この傾向が強いリーダーは、周囲の意見に耳を貸さずに拙速に意思決定を下し、周りの人たちから敬遠される場合が多い。

 私は以前、ある企業のCIO(最高情報責任者)のコーチングを担当したことがある。その人物は、ほかの最高幹部たちからは好かれていた。どんな要求に対しても「ノー」と言わないからだ。しかし、この人物は代わりに、部下たちには達成不可能な課題を突きつけていた。その結果、上司には愛されていたが、部下には嫌われていた。

 私が提案したのは、説明責任を確保する措置を導入することだった。この人物が問題のある行動を取れたのは、説明責任を問われなかったからである。

 そこで新しい仕組みを採用し、上司に何かを約束する前に、チーム内のもう一人の人物の同意を得ることを義務づけた。これにより、意思決定を行うたびに、根拠と計画を示すことが求められるようになった。信頼を築くための苦労は増えたが、これ以降、部下との関係は改善した。

 自分自身やほかの人たちに説明責任を持たせるためには、アドバイザーを用意したり、アセスメントの機会を確保したりしてもよいし、単に周囲の意見を求めてもよい。あるいは、能力や専門性に基づいて、ほかの人たちに一部の権限を委譲してもいいだろう。

 以上のような悪い行動パターンは、過去にはあなたの役に立ったときがあったかもしれない。しかし、リーダーシップと対人関係の面では、これらの行動を断ち切らない限り、あなたに害が及ぶ。

 本稿で紹介した事例のいずれにも自分が該当しないように思えたり、どれが自分の状況に最も近いのか確信が持てなかったりする人は、信頼できるメンターや同僚や友人に意見を尋ねてもよいかもしれない。やがて、自分が悪い行動パターンに陥っているときにすぐ気づき、行動を改められるようになるだろう。


6 Habits That Hurt Your Career-and How to Overcome Them,” HBR.org, January 23, 2020.