世界経済フォーラムが毎年発表する「ジェンダーギャップ指数」。2019年版は153カ国の総合順位で、米国53位、日本121位。両国とも男女格差の課題が山積みです。どうすれば、女性が真に活躍できる社会となるのか。今月号は、第1特集「女性の力」として、9つの論考を掲載しています。第2特集では、故・クレイトン・クリステンセンHBS教授の功績を、3つの名著論文とともに振り返ります。
特集1「女性の力」は、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏の妻、メリンダ・ゲイツ氏の第1論文が中核。「いまこそ男女平等社会を実現する好機」と論じます。
そのためには戦略的投資と、利害関係者の協働が必須として、3つの戦略((1)障壁を取り除く、(2)女性の昇進を速める、(3)変革できそうな組織に圧力を高める)を提示。具体的な行動で結果を出す、という点がミソです。
ゲイツ論文を掘り下げる分析と提言が、続く6つのHBR論考です。第2論考は、世界経済フォーラムの「世界ジェンダーギャップ報告書」をもとにして、男女格差の現状を押さえます。第3論考は、有給育児休暇制度の意義と必要性を、あのセリーナ・ウィリアムズの夫が訴えます。
第4論考は、戦略的投資の具体論。女性の起業家や投資家を急増させるには、ベンチャーキャピタル(VC)の活用が有効です。なぜなら、VCは劇的な成長を求められるからで、そのための方法を提言します。
第5論考は、ゲイツ論文で示された最大の障壁であるセクシュアルハラスメントをいかに撲滅するか。#MeTooに呼応したTime's Up(もう終わりにしよう)運動の幹部が法律改正、ビジネス慣行や文化規範の変革を訴えます。セクハラは被害者の女性はもちろん、企業全体に甚大な害をもたらすことを示します。
第6論考は、世界有数の金融機関のCEOが、男女間における所得と資産の格差を明かし、その改善策を語ります。第7論考は、男女不平等が最も深刻な政治状況をいかに変えるかを、米国共和党議員が論じています。日本でも応用できるはずです。以上が米国と世界の状況に対するHBRの論考です。
では、日本ではどうすべきか。2人の論客の登場です。篠田真貴子氏は日米で学び、内外資の企業5社で勤務したワーキングマザーの知見から、ゲイツ論文を分析。「日本では男女観を内から変える質的アプローチに注力すべき」と論じます。
厚生労働省局長や資生堂副社長などの要職を歴任されてきた岩田喜美枝氏には、女性に不利な労働環境をどう改善してきたかについてのご経験と、さらに前進するには「女性自身も変わらなければ真の男女平等は実現しない」と考える理由を語っていただきました。
特集2は、今年1月に逝去されたハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセン氏の追悼です。
ベストセラー『イノベーションのジレンマ』の元論文が米HBRで発表されたのは1995年1-2月号(DHBRでの邦訳掲載は同年7月号)。以来、氏の言動に世界は注目してきました。「ディスラプション」(破壊的)のコンセプトは、テクノロジーのみならず、戦略、組織構造、ビジネスモデルに及び、世界の経営者や識者は、新論文が発表されるたびに熟読してきました。
さらに、氏の考察は人生へと広がり、よりよく生きるための考え方が提示され、万人の心の拠り所へと発展していきます。「イノベーションのジレンマ」や「プロフェッショナル人生論」など3つの名著論文を再掲して、その功績と人徳を、日米の学識者の論考とともに振り返りました。