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これまで積み上げてきた専門分野の知識と経験を活かして、重大な社会問題の解決に挑みたい。そう考える人が増えているが、実際には、成功体験を活かせるどころか、豊富な成功体験が足を引っ張ることが多い。この傾向は、既存の仕組みの中で卓越した成果を上げてきた人たちに強く見られる。本稿では、リーダーが「成功の罠」に陥らないために乗り越えるべき、6つの障害を紹介する。


 おめでとう。あなたは専門分野で成功した。でも、どこか物足りない。

 最近は、コミュニティやグローバル時代の大義があなたの目的意識に訴えるようになり、自分の才能を活かしたいと思うようになった。あるいは、会社が将来のために前向きな社会的インパクトを与えようと決めて、あなたに指揮を委ねたかもしれない。

 あなただけではない。人生のあらゆるステージで、大きな社会問題に取り組み、世界によい変化をもたらそうという意識が高まっている。

 学生は、気候変動や銃暴力に抗議してデモを行う。起業家は、代替肉や環境に優しい物質を開発する。ベンチャーキャピタリストは、教育の不平等を是正しようという非営利組織に出資する。一流の弁護士やCEOが、難民危機や海洋汚染、「食品砂漠」に暮らす人々の栄養補給などの問題について、イノベーティブな解決策を探っている。

 私は研究やリーダーたちとの仕事を通じて、大きな社会問題を解決するには、ふさわしい価値観と野心があるだけでは足りないことに気がついた。このような問題は常にやっかいだ。複雑で、不明瞭で、規律を無視して業界の枠を超えなければならないときもあり、ステークホルダーの争いを制してイノベーションを実行する必要がある。さらに、人々やコミュニティが望んでいない支援を提供して、せっかくの取り組みが懐疑と疑念で迎えられるときもある。

 優秀なマネジャーやプロフェッショナルは、このような問題解決にも、実に多くの強みを活かすことができる。ただし、そこには大きなパラドクスがある。分野を横断する難題に取り組むうえで最もふさわしい人は、自身の成功が足かせになりやすいのだ。

 あるエグゼクティブは、キャリアの大半を通じて、権威主義的なテクノクラシー流のリーダーシップで成功してきたことが自慢だった。しかし、彼は多民族のコミュニティで施設を開こうとしたが、うまくいかなかった。文化の豊かさを尊重してコミュニティと関係を築くことができなくなり、アドバイザーとして振る舞うのではなく、技術的な修正点にこだわる指揮官になってしまったのだ。

 世の中に変化を起こすようなイニシアチブで能力を発揮するために、リーダーは、自分の成功から生まれる6つの障害を乗り越えなければならない。