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現状を打破するために、考えるよりまず行動する。問題点はあとから修正すればいい――急成長企業の中にはこうした発想を持つ会社も珍しくないが、ウーバーやウィーワークのように、そのやり方が自社をリスクにさらす可能性もある。筆者らの研究により、こうした「ロコモーション型」の組織では倫理が軽視され、差別的な決定を下しやすいことがわかった。


 シリコンバレーのテクノロジー業界は、「前もって許可を取ろうとするのではなく、失敗した場合に許しを乞えばよい」「素早く行動し、現状をぶち壊せ」といった発想で有名だ。しかし最近は、その弊害を思い知らされている。配車サービス大手のウーバーやシェアオフィス大手のウィーワークなどの例からわかるように、この種の思考様式は急成長企業を深刻なリスクにさらすことがある。

 モチベーションについて研究する心理学者は、このように「とりあえず行動して、問題があればあとで対処すればよい」というアプローチを「ロコモーション型」の目標追求と呼ぶ。目標追求のアプローチとしては、このほかに「アセスメント型」と呼ばれるタイプもある。こちらは、注意深く検討したうえで行動を起こす姿勢のことだ。

 これまでの研究によれば、期限に遅れないように慌てて課題に取り組むなど、ロコモーション型のアプローチは、非倫理的な意思決定を生みやすい。それに対して、さまざまな選択肢を慎重に検討するアセスメント型のアプローチのほうが、倫理的な意思決定につながりやすいことがわかっている。

 おそらく、アセスメント志向の強い人はロコモーション志向の強い人に比べて、倫理を考慮に入れるケースが多いのだろう。倫理を意識すれば、リスクに気づき、悪い結果を避けることができる。

 しかし、この研究はあくまでも個人単位の行動を調べたものだ。では、組織に関しても同じことが言えるのか。