
起業家にとって情熱は、幾多の困難を乗り越えて前進し続けるための原動力になる。情熱が強いほど起業の成功率は高まるだろう。ただし、個人ではなく創業者チームという単位で見ると、そうとは限らない。筆者らは起業家の情熱を3つに分類したうえで、創業メンバー間の情熱の強さに差があるとき、そしてメンバーが異なる種類の情熱を抱いているときには、組織や事業のパフォーマンスが低下することがわかった。
情熱は、起業家が前進し続けるために必要な、ガソリンのようなものだ。研究によれば、起業家が抱く情熱の強さは、創造性、粘り強さ、事業のパフォーマンスと強く結びついている。情熱が強ければ強いほど、成功の確率が高まるのだ。
では、起業家個人ではなく、スタートアップ企業の創業者チームについても同じことが言えるのか。スタートアップ企業の半数以上は、複数の人物で構成されるチームにより創業され、経営されている。創業者チームがどのように協働するかは、事業の成否を大きく左右することがわかっている。
しかし、創業者チームの情熱が業績にどのような影響を及ぼすのかは、はっきりしていない。情熱は常にチームワークを高めるのか。情熱が強ければ強いほど好ましいのか。きわめて強い情熱を持っているメンバーと、まったく情熱を感じていないメンバーがいる場合は、どうなるのか。メンバーが抱く情熱の対象がばらばらの場合はどうか。
こうした点を明らかにするために、私たちはあるアクセラレーター・プログラムに参加しているテクノロジー企業107社のチームについて調べた。
すると、メンバー内で情熱の強さの違い、および情熱の対象の違いが大きいほど、パフォーマンスが悪いことがわかった。メンバーの感情や自我がぶつかるためだ。また私たちの研究によれば、情熱の強さと対象の多様性が大きいと、後の段階でさらに大きな悪影響が生じることも明らかになった。