
新型コロナウイルスに関する新たな情報が、どんどん飛び込んでくる。人は不安や脅威を感じたとき、自力でその状況をコントロールできているという実感を得るために、近視眼的な決断を下しがちだ。その結果、トイレットペーパーを買い占めたり、持ち株を売却したりという行動に走る。「早く動かないと」という誘惑に抵抗するには、どうすればよいのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報は、毎日のように変わる。人々はそれを見て、「春休みの予定をキャンセルしようか」とか「家族とコミュニティを守るにはどうすればいいか」といった決断を下そうとする。心理学的に見て、そうした判断が難しいと感じる理由はいくつかある。
第1に、忍び寄る脅威が現実に存在する。新型コロナウイルスは現実のもので、急速に世界中に広がり、人々の命を奪っている。だから、毎日ニュースになる。人間の脳は脅威に注目するようにできているから、気候変動のような漠然とした脅威とは違って、このニュースは人々の関心を独占する。
第2に、このウイルスの感染拡大には、はっきりしないことがたくさんある。実際にはどのくらいの人が感染しているのか。どのくらいのスピードでコミュニティ全体に広がるのか。最終的にはどのくらいの数の人が感染するのか。
未来を予測するとき、人間は直線的なトレンドならうまく理解できるが、指数関数的に広がるトレンドを理解するのは苦手だ。最初は一握りだった感染者が、瞬く間に増える可能性がある。こうした不透明性ゆえに、私たちはますますその動向から目を離せなくなる。
第3に、人間はこのウイルスの拡散を、ほとんどコントロールできない。手を洗ったり、顔を触らないようにしたり、社会的距離戦略を実践したりといったことはできても、私たちにはどうにもならない側面がたくさんある。人間は自分が行為主体性のない状況が好きではない。このため一段と不安が高まり、コントロールを取り戻すために何かをしたいという欲求を生み出す。
第4に、このウイルスの拡散を抑制する試みは、基本的にはすべて予防策だ。それが成功すれば、一部の人は病気にならない。しかし、こうした措置を取らなかった場合どうなるかを調べる対照実験ができないので、どの措置やプログラムが病気の退治に有効か把握するのは難しい。