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不正や不祥事が起きると個人の資質が問題にされがちだが、実際には組織風土に問題があるケースが多い。筆者らによる調査の結果、従業員の4人に1人が、悪いとわかっていることを強いられるプレッシャーを経験したと回答した。非倫理的行為が発覚して公になれば、企業は大打撃を受けることになる。それを防ぐために、リーダーには何ができるのか。


 非倫理的な行為は時代や地域を問わず、あらゆる分野のあらゆる種類の組織で行われている。

 米陸軍の兵士とCIA(米中央情報局)の職員は、イラクのアブグレイブ刑務所で捕虜を虐待した。フォルクスワーゲンの経営陣は、排出ガス規制を不正に逃れた。ウェルズ・ファーゴは数百万件の銀行口座を顧客の承諾なしに開設するなどの不正営業行為で30億ドルの罰金を支払い、刑事訴追を回避した。

 こうした不祥事は、個人の「腐ったリンゴ」に矛先が向かいがちだが、真の原因はむしろ、非倫理的な行為が起きた組織の風土にあることが多い。

 イェール大学センター・フォー・エモーショナル・インテリジェンスはファース財団と共同で、全米のさまざまな業界で働く1万4500人以上を対象に、仕事上の経験について調査を実施した。そのサンプルは、米国経済の産業の分布と、人口統計学的な多様性を代表している。

 調査では、非倫理的な行為をする際にどのくらいプレッシャーを感じるか、職場で発言することにどのくらい不安を感じるか、さらには職場で経験する感情や、上司の感情的知性(EI)などについて質問した。

 私たちは、その結果に不安を覚えた。

 回答した従業員の大多数は、非倫理的な行為を強いられるようなプレッシャーをまったく感じたことがないか、ほとんど感じたことがない。しかし一方で、ときどき感じる人が11%、かなり頻繁に感じる人が12%いる。つまり、23%の人───約4人に1人──が、悪いとわかっていることを強いられるようなプレッシャーを経験しているのだ。