
ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)を推進するために、ジェンダーや人種、性的指向による差別を解消するための施策を実施する企業が増えてきた。だが、その取り組みの中に障害者が含まれているだろうか。障害者インクルージョンを促すことは、大きなチャンスをもたらす。本稿では、それを実現するための3つのステップを紹介する。
企業は長きにわたり社会の変化を主導してきた。いまでは世界中の企業が、気候変動のような難題や、給与格差といった不当な慣行を認識するようになった。
企業におけるダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)も、その特徴的な問題の一つである。ジェンダーや人種、性的指向の境界線を越え、平等に向かって企業は大きく前進してきた一方で、ある側面はあまりにも無視されてきた。それは、障害である。
国連の障害者権利条約は、この条約で保護される障害者を「長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害があり、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを含む」と定義している。
90%の企業がダイバーシティを優先していると主張しているが、カナダのリターン・オン・ディスアビリティ・グループ(Return On Disability Group)の報告によると、障害者を考慮に入れた取り組みをしているところは、わずか4%である。そして、障害を抱える顧客のニーズに真の意味で応えている企業は、ごく一部にすぎない。したがって、最も進歩的な組織でもまだ「ダイバーシティ風」にすぎない。
我々がこの言葉を使い出したのは、2019年の世界経済フォーラム(ダボス会議)の年次総会で「ザ・バリュアブル・ファイブハンドレッド(The Valuable 500)」キャンペーン、すなわち企業に障害者インクルージョンを促すためのキャンペーンを立ち上げたときである。
この変化を起こすことは面倒な義務ではなく、チャンスである。世界銀行の試算によると、世界には10億人以上、世界人口の約15%の障害者がいる。
彼らを消費者として見れば、米国、ブラジル、パキスタン、インドネシアを合わせたサイズの市場と8兆ドルの可処分所得があると、リターン・オン・ディスアビリティ・グループは指摘する。また、彼らを労働者として見れば、人材不足を解消するとともに、組織のダイバーシティが高まって、より的確な決断やイノベーションを推し進めることができる。
自社が真の意味であらゆる人々の中に価値を見出していることを世界に示したいと思うなら、採用プロセスや職場へのアクセシビリティ、提供する製品・サービスにおける障害者インクルージョン向上のために、リーダーたちがすぐに行えるステップが数多くある。