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新型コロナウイルス感染症によって先の読めない状況が続き、多くの人が不安を抱えている。本人は善意で新型コロナに関する情報を拡散した結果、その人の不安も人から人へと広がり、パニックを引き起こす可能性がある。こうした状況を防ぐうえで、マインドフルネスの実践が効果を発揮する。


 3月10日木曜日。朝9時からの授業に向かうと、教室は重苦しい空気に包まれていた。「やあ、みんな元気かな」と問いかけても、学部生も大学院生も反応は鈍い。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として、ハーバード大学とプリンストン大学が、キャンパス閉鎖を発表したのは数日前のことだった。ホーリークロス大学でも、「学生は1週間以内に荷物をまとめて、寮を出るように」という指示が出たという。

 その日、ブラウン大学の学生たちは、クリスティーナ・パクソン学長のメールを心待ちにしていた。ブラウン大学は今年度いっぱいで閉鎖になるかもしれないという噂があり、10日の朝に学長が全学生にメールを送ることになっていたのだ。

 ところが、その日は朝9時から授業がある。しかも、スマートフォンもコンピュータも使用禁止の授業だ。

 いますぐにでもポケットからスマホを取り出して、メールをチェックしたい――。学生たちがそう思っているのが、ひしひしと感じられた。筆者の授業方針のせいで、彼らは重大情報を得る機会を妨げられていたのだ。

 もう学長のメールは届いているのか。どんな内容なのか。学生たちはうつむき加減で、とてもディスカッションをする気分でないのは明白だった。

 自分の身に何が起こるのか、彼らは「今日」知る必要があった。そのメールの内容は、彼ら(とりわけ4年生)の人生に大きな影響を与えるだろう。なかには、涙をこらえている学生もいた。彼らの「4年生の春」は、最も記憶に残る春として(よい意味ではないが)、歴史に刻まれるだろう。