
新型コロナウイルス感染症による不安と恐怖が社会を覆うなか、リーダーにはチームを正しい道に導くことが求められている。メッセージを発信する際は、ちょっとした工夫が結果を大きく左右する。どんな言葉を選択し、どのように伝えればよいのか。本稿では、人を動かす際に有効な4つのポイントを紹介する。
米国ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が、新型コロナウイルスの拡散を遅らせるために、エッセンシャル・ワーカー(必須労働者)以外の人はすべて自宅に留まるべきだと発表したとき、記者の一人が「シェルター・イン・プレイス(屋内退避)」命令を出すことを決めたのはなぜかと尋ねた。するとクオモは、こう訂正した。
「シェルター・イン・プレイスではない。言葉は重要だ。人々が恐れ、パニックに陥るからだ。シェルター・イン・プレイスは現在では、アクティブシューター(無差別銃撃者)や学校銃撃に対して発令される。私たちは2つの戦線で戦っている。ウイルスと戦い、そして恐怖と戦っているのだ。恐怖に従って行動すれば、危険な状況に陥る」
人類の歴史の大半を通して、リーダーたちはみずからの言葉によって人々を行動に駆り立ててきた。そして、今日の多くの経済学者や経営者らは、「指揮統制」型のリーダーシップが「説得による力」に取って代わられた世界において、言葉は最も重要なツールだと断言している。
クオモは、そのスキルを身につけている。彼の記者会見は、危機的状況の中で、聞き手の注目と信頼を得るためには言葉がいかに重要かを示している。
この不確実な時期に、チームにとって明瞭さと希望の指針でありたいと願うビジネスリーダーは、スピーチに最良の実践法を取り入れることで、クオモに倣うことができる。