
顧客中心主義や顧客第一主義を謳う企業は多いが、その成果を正しく計測しているだろうか。KPI(重要業績評価指標)は、顧客が会社のためにどう行動したかを映し出すものであり、会社が顧客のためにどう行動したかを示す指標ではない。筆者は、自社のCPI(顧客業績評価指標)を定義し、それを測ることで、他社との差別化を実現し、まっとうな成長を実現できると主張する。
ほとんどのリーダーは、顧客中心主義を謳う。けれども、リーダーたちが実際に数値計測しているデータが会社視点のものばかりだとすれば、顧客中心主義という主張をどこまで信用できるだろうか。
売上高や成長率といったKPI(重要業績評価指標)は、顧客が会社のためにどのように行動しているかを映し出すものだ。顧客中心主義を徹底し、成長を最大化したい企業は、自社が顧客のためにどのように行動しているかも数値計測すべきである。
顧客はほとんどの場合、企業が自分のためにどのように行動しているかを示すデータを一覧できる、オンラインシステムスなど持っていない。それでも、企業と取引するときは常に、何らかの目的、問題、ニーズ、意図、問いを――要するに、期待する結果を――持っている。また、そのような結果がどのくらい早く、あるいはどのくらい簡単に実現するかという期待も抱いている。
そうした期待がどの程度実現しているかは、「CPI(顧客業績評価指標)」によって数値計測すべきだ。
CPIを採用し、データを集めて、それを有効活用することにより、顧客中心主義の姿勢を強化する企業が増えている。その中には、消費者相手のビジネスを行う企業もあれば、法人相手のビジネスを行う企業もある。
顧客は、企業の成長を促す唯一の原動力だ。CPIの向上はしばしば、成長を最も強力に後押しする要因であり、成長できる企業を見分ける最も強力な手掛かりにもなる。
保険ビジネスを例に考えてみよう。保険加入を検討している顧客が問い合わせのオンラインフォームを送信したり、電話で問い合わせをしたりした場合、すぐに見積もりを示す保険会社は、問い合わせへのお礼だけ述べて、のちに担当者から連絡するとしか言わない保険会社に比べて、顧客に契約してもらえる可能性が高い。顧客が望んでいるのは、すぐに見積もりを知ることだからだ。
ある保険会社が問い合わせを(担当エリアなどに基づいて)担当者に回している間に、顧客はほかの保険会社から素早く見積もりを示されている。保険会社の担当者がその顧客に連絡を取ったときには、すでに他社と契約を済ませているかもしれない。
「迅速に見積もりを示してほしい」という顧客の期待に関して、より優れた成果を挙げたライバルに後れを取るのだ。つまり、「迅速な見積もり」を自社のCPIの一つと位置づけ、それを数値計測してマネジメントしている保険会社は、このCPIと成長との間に直接的な相関関係を見出せる。
CPIを採用すべき最大の理由は、ここにある。顧客にとって重要な成果(CPI)に注意を払えば払うほど、会社にとって重要な成果(KPI)も高まるのだ。