新種のデータの登場と、人工知能(AI)の発展に伴い、専有データの必要性は高まっている。センサーデータ、モバイルデータ、新しい形の決済データ等々、新たなデータ形式がさまざまな業界で、たくさん現れている。
商用AIのほとんどは機械学習を伴うが、もし自社のデータがその他大勢のものと同様であれば、それらの機械に情報を与えているモデルと何ら変わらず、競争優位にはならない。企業はいまこそ、専有データ戦略を考案して実行する必要がある。
一部の企業と業界はすでに、有効な専有データ戦略の方向性を示している。
例として、アルファベット傘下のウェイモや、ゼネラルモーターズ(GM)傘下のクルーズは、数十億マイルに及ぶシミュレーション走行と路上走行を通じて、地図とセンサーのデータをせっせと収集している。AIを利用しての放射線医学や病理学で使われる医用画像診断に注力する企業は、画像データの入手やそのための協業を進めている。
メディア業界の企業は、自社の映像、テレビ番組、ニュース、本や雑誌などの価値を守ることに尽力している。コンテンツ資産を流通させるフォーマットやチャネルは多様化が進み、コンテンツ制作の始動時から流通形態が計画されている場合が多い。
また、投資会社の例もある。彼らは「オルタナティブデータ」の蓄積と分析に、ますます興味を強めている。これは、経済状況や特定企業の業績を、従来とは異なる手法で判断することだ。たとえば、小売業界の景気を判断する際、店舗駐車場の衛星写真を分析するという方法が採られるかもしれない。
ルネッサンス・テクノロジーズのようなヘッジファンドが成功した理由の一つには、証券の価格設定などのデータセットを収集、精選、統合、分析して、専有資産に仕立て上げていることが挙げられる。