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起業家の多くは、事業を成功させるために人生のすべてを投じる。彼らが友人との関係や健康な生活を犠牲にした話は世の中にあふれているが、その結果、慢性的なストレスや不安を抱えている人も少なくない。この状態は健全とは言えず、本人の心身の健康を害するだけでなく、チームメンバーにも悪影響を与えかねない。筆者らの研究により、自己認識を高めて現状を正しく把握することが、この問題の解決につながることがわかった。


 起業家は、自分が構築している事業に多大なる情熱を注ぐものだ。時にはチームや投資家を失望させることを恐れるあまり、自身の会社が持つ可能性を形にするためなら、ほとんどどんなことでもやる。起業家のブログやスタートアップの事後分析には、事業のために睡眠や友人関係、家族関係、運動、栄養などを犠牲にする話があふれている。

 新規事業を何よりも優先すると、慢性的なストレスにつながり、それは起業家の肉体的、精神的な健康に大きな打撃を与える。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究によると、起業家はそもそも一般の人たちよりも精神衛生への影響を受けやすい。また筆者らの経験からも、彼らのあいだで不安、自己不信、抑うつ、孤独感が蔓延していることがわかっている。