
現代のリーダーが果たすべき役割はあまりに多い。部下の仕事の問題解決を支援するだけでなく、人として共感や理解を示すことも求められる。だが実際には、話を聞いてもらいたいだけの部下に指示を出してしまうなど、彼らの感情と向き合うことを疎かにしがちだ。本稿では、神経科学の研究を参考に、分析と感情の神経回路を状況に応じて切り替える方法を紹介する。
あなたは同僚や直属の部下に、「話を聞いてもらえていない」「ちゃんと評価されていない」と思われる反応をしたことはないだろうか(あなた自身はそんなつもりはなくても)。
相手は話を聞いてもらいたかっただけなのに、説教くさく解決策を示したのかもしれない。あるいは、共感や理解を求められていたのに、締切や仕事への献身、責任を強調したのかもしれない。
マネジャーなら、こうした経験がある人は少なくないはずだ。現在のような異例の状況では、このような反応をしてしまう可能性は一段と高まる。
たしかに世界はいま、極端に難しい状況にある。新型コロナウイルスの感染者と死者は莫大な数に上り、経済活動の休止や減速で多くの企業が破綻に追い込まれた。米国の失業者は、大恐慌以来のレベルに達しつつある。
さらに、またも丸腰の黒人男性が警察官に殺された事件(その一部始終をとらえた約9分間の動画は世界中に拡散した)を機に、街は正義を求めるデモ隊で埋め尽くされている。
このようなときは、あなたの部下も苦しんでいる。ストレスを感じ、怯えている。自分の健康を心配している。自分と家族を養っていけるかどうかを心配している。そして、米国と世界の現在と未来の公衆衛生を懸念している。
実際、あなたも部分的には同じように感じている可能性が高い。それでも、あなたはマネジャーとして踏ん張らなくてはならない。予算を管理し、売上げ目標を達成し、組織を存続させるために難しい決断を下さなければならないのだ。
スタッフのニーズや恐怖や懸念に気を配ることは、何よりも重要だ。同時に、差し迫った問題を解決し、ビジネスの維持に必要な決断を下すことも重要である。