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新型コロナウイルス感染症への対応や香港情勢をめぐり、米中の緊張感はいっそう高まっており、双方が態度を硬化させている。米国企業の幹部は、自社のチャイナ・リスクを理解して真剣に対策を練る必要がある。しかし、その実態を十分に把握できていない企業も多いだろう。本稿では、取締役会が中国との関わり方を検討するうえで有効な5つの問いを示す。


 米国のジミー・カーター大統領と、中国の鄧小平国務院副総理によって、両国が国交を樹立したのは1979年のこと。米中関係はいま、そのとき以来、最も緊張している。

 ここ数ヵ月、新型コロナウイルス感染症や香港情勢をめぐり、両国の態度は硬化してきた。ワシントンのエスタブリッシュメントの間では、40年近くかけて構築されてきた両国間の複雑なビジネス関係を「デカップリング(断絶)」すべきだと唱える声さえある。

 米国の多くの企業は、中国事業にかなりの自由裁量を与えているため、経営陣と取締役会は、自社が中国で直面するリスクを十分に把握していないことが多い。

 企業の取締役会が、過去15年間に行ってきた機密評価75件を筆者らが調べたところ、香港を含むグレーター・チャイナ(中華圏)における自社オペレーションの全容を把握している取締役会はゼロに近かった。経営陣から、海外営業全般についての報告はあるかもしれないが、取締役会レベルで中国事業の詳細が話題に上ることはめったにない。

 中国ビジネスが儲かっているときは、取締役会も細かいことを問わないでいられるかもしれないが、いまは違う。不吉な嵐雲が近づいているのだ。中国市場へのアクセスが失われれば、あるいはサプライチェーンや調達ルートが崩壊すれば、多くの企業は大変な事態を迎える。ゼネラル・モーターズやアップル、インテルといった有名企業も例外ではない。

 米国企業の経営陣と取締役会は、自社のチャイナ・リスクを理解するため、ディスカッションを始める必要がある。そのアジェンダには、以下の5つの問いが含まれるべきだ。