Illustration by Fabrizio Morra

グローバル化の進展は恩恵ばかりをもたらしたわけでなく、リスクも国境を越えるようになった。新型コロナウイルス感染症による危機は、その象徴的な出来事だ。企業はビジネス環境の変化に柔軟に対応しなければ生き残れないが、変化の必要性自体は理解していながら、それを実践できずにいる。本稿では、組織変革にまつわる3つの「誤解」を明らかにし、そこから転換する方法までを示す。


 ここ数年、私たちは変化について、クライアント対する定期的な調査を行っている。

 2018年に回答した2000人以上のマネジャーのうち47%が、自分の会社が生き残るためには、3年に1回か、それより速いペースで改革が必要だと考えていた。2020年のデータは集計途中だが、最初の500人の回答者を見ると、その割合は58%に増えている。

 グローバル経済に参加することで生まれる深い相互関係を考えれば、当然の数字だろう。世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2019」は、経済、環境、地政学、社会、技術の5分野にまたがる30の重要なリスクを挙げ、マッピングして相互関係を示している。

 感染症の広がりは、影響が大きいリスクの上位10位に入っていた。新型コロナウイルス感染症(もしくはそれに類するもの)は、完全に予想されていたことになる。ほかにも発生の可能性が高いと予想されている混乱の多くが、おそらく現実になるだろう。

 問題は、私たちがリスクを認識し、場合によっては予測しているにもかかわらず、リスクに適応するのが苦手なことだ。いまから20年前にHBRに掲載された論文でニティン・ノーリアとマイケル・ビアーは、「変化の取り組みは全体の約70%が失敗する」と述べている。今日ではさらに、グローバル・コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループによると、「変革の取り組みの75%が期待した結果をもたらしていない」。

 したがって、企業が長期的な成功を持続できなくなったように見えるのも不思議ではない。イノサイトの2018年企業寿命予測(Corporate Longevity Forecast)によると、S&P500を構成する米国大企業の平均存続年数は、1964年の33年から「2016年には24年になり、2027年には12年まで縮まると予測される」。

 これは、変化がどのように機能するかについて、基本的な前提のいくつかに深刻な間違いがあることを示唆している。

 私自身のクライアントとの経験から、変化をめぐる失敗の多くは、効果的とされている3つの前提に端を発しているようだ。私たちに深く染み付いているこれらの前提をひっくり返すことから、結果が変わっていく。