
優れた能力を有することはもちろん、自社のカルチャーにも適応できる人材を、どうすれば採用できるのか。多くの企業が、候補者の過去の行動を判断基準とする行動面接を実施しているが、それは経歴に関するストーリーテリングの能力を測れるだけで、批判的思考や対人関係スキルを把握することはできない。本稿では、適材適所の人材を見つけるための4つのアプローチを示す。
CRMソフトウェアの開発を手掛ける私たちの会社では、社員を採用し始めてほどなく、気づいたことがあった。従来型の採用面接のプロセスには、控えめに言っても欠陥があるとわかったのだ。
私たちは当時、社員を6人から18人に増やしたいと考えていた。採用活動における目標は、企業文化に貢献できて、質の高い仕事を行い、長く会社に在籍してくれる優秀な人物を採用することだった。
私たちはこのとき、社員の離職率を抑えたいという考えの下、時代遅れの行動面接(採用候補者の過去の行動を答えさせる質問をする)に頼るのをやめて、面接プロセスの最適化を目指すことにした。
採用面接での古典的な問いと言えば、たとえば「あなたの最大の強みと弱みを教えてください」「仕事で試練を乗り越えたときの話を聞かせてください」といったものだろう。
いまでも、このような面接を行っている企業が少なくない。それは、その企業の人たちも同じような質問をされた経験があるからにすぎない。一般的に採用されている面接方法は、世代間で受け継がれてきた伝統と言ってもよい。しかし、私たちが手痛い失敗を通じて思い知らされたように、このやり方では正しい評価ができない。
行動面接は、みずからの経歴に関する情報を伝える能力をテストするうえでは有効かもしれない。だが、ストーリーテリングやそれと類似のスキルが必要とされる職の採用活動でない限り、この方法によっては、採用候補者の能力に関して十分な情報を得られない場合が多い。
私はチームの面々とともに、これまで5年間、この問題を解決しようと努力してきた。自分たちの経験と最新の研究結果をもとに、試行錯誤を重ねながら新しい採用面接プロセスをつくっていったのだ。
そうやって編み出した手法は、求職者を旧来型の面接とはまったく異なる状況に放り込み、批判的思考(クリティカル・シンキング)の能力、テクノロジーの知識、対人関係スキルを把握するというものである。
この方法を導入して以来、採用される社員の質が高まり、社員の会社への貢献も大きくなった。社員の定着率も大幅に向上した。過去7年間で正社員が退職したのはわずか4人。しかも、そのうち2人は大学院進学のため、もう2人は異業種の仕事に就くためだった。
いま新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる企業にとっても、この採用面接プロセスが問題の解決策になりうると、私たちは考えている。
世界の多くの企業は、生き延びるために支出を削減することを余儀なくされている。その一方で、消費者ニーズの変化に対応するために、社員に新しいスキルを学ばせたり、新しい社員を採用したりせざるをえない企業も少なくない。
ところが、採用には莫大なコストがかかっているにもかかわらず、米国企業の約3社に1社しか自社の採用プロセスの評価作業を行っていない。そのような状況で、私たちのアプローチを採用すれば、企業が適材適所の人材を見つけるための時間とコストを減らす効果があるかもしれない。
そのアプローチとは、具体的にどのようなものなのか。以下で説明しよう。