
フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)は、燃焼式たばこ製品から脱却し「煙のない未来」を実現することを誓い、ビジネスモデルの大転換を着実に進めてきた。また、ESGに関する取り組みも非常に積極的であり、先進企業の一つである。だが、同社が目覚ましい成果を上げてきたとはいえ、人に害を与える製品を販売している以上、投資家や社会から完全な信頼を得られているとは言えない。アンドレ・カランザポラスCEOは、この難題とどう向き合っているのか。
2016年、フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)は、事業の大転換に乗り出す方針を明らかにした。紙巻きたばこなど、燃焼を伴うたばこ製品を脱却し、より健康的で煙の出ない製品に移行することを決めたのだ。
具体的には、2025年までに世界で少なくとも4000万人の喫煙者に紙巻きたばこをやめさせ、代替製品に乗り換えさせたいという。究極的な目標は、「煙のない未来(スモークフリー・フューチャー)」を築くことだ。
2020年6月、同社は長文の報告書を発表し、2016年以降に成し遂げた前進を誇って見せた。
同社によれば、紙巻きたばこなど、燃焼を伴うたばこ製品の出荷数は、1140億ユニット減少した。このうち半分が自社の努力の産物だという。一方、煙の出ない製品の出荷数は520億ユニット増加した。
また、同社は、ESG(環境、社会、ガバナンス)のいくつかの側面での改善を約束した。たとえば、2030年までにカーボン・ニュートラルの達成を目指し、2025年までに自社製品によるプラスチックごみの量を半分に減らすという目標を打ち出した。
いずれも期待が持てる動きに見える。その点では、7月7日に米国食品医薬品局(FDA)が行った発表も同様だ。FDAは、PMIの加熱式たばこを「リスクの軽減されたたばこ製品」と呼び、この製品の販売と使用が燃焼式たばこからの脱却につながることを期待していると述べた。燃焼式たばこの消費量が減れば「国民の健康が改善される」と、FDAは考えている。
しかし、疑念は消えていない。いまも多くの大口投資家や個人投資家が、PMIの株式を投資対象から除外している。同社の紙巻きたばこなどの燃焼式たばこ製品が、世界中で生み出している害を考えてのことだ。
投資家は、「煙のない未来」の実現を誓い、ESGの原則を尊重するという同社の姿勢を信じてよいのか。典型的な「シン・ストック(保有することに罪悪感を持つような株式銘柄)」の企業であるPMIが信頼をはぐくみ、変身を遂げようとするうえで、どのような困難にぶつかるのか。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』は最近、PMIのアンドレ・カランザポラスCEOにインタビューを行った。