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新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぐために、接触者追跡アプリを展開する国が増えてきた。効果を発揮するには人口の60%以上の利用が必要だと言われるが、その普及率は芳しくない。アプリのダウンロードを義務化せずに普及させる唯一の方法は、最初から対象者全員を対象とするのではなく、小規模のコミュニティでクリティカルマスに達してから、徐々に規模を拡大することだと筆者らは主張する。
たいていのプラットフォームは失敗に終わる。その理由は、ユーザー数がクリティカルマスに達しないからである。
よく知られる失敗例として、グーグルが運営していたSNSのグーグルプラス(Google+)や、アップルの音楽を介したSNSのアイチューンズ・ピン(iTunes Ping)、オンライン食品雑貨販売のウェブバンなどが挙げられる。
新型コロナウイルス感染症の接触者追跡アプリは、どう設計して世に送り出し、広く普及させるかを根本的に考え直さなければ、ほとんどは前述の失敗例と同じ運命をたどることになるだろう。
もちろん、中国のように政府がアプリのダウンロードを国民に義務づけることは可能である。しかし、そのような高圧的な方法は少なくとも、欧州や米国では受け入れられないはずだ。
プラットフォームの歴史を見ると、義務化せずにアプリを成功させる唯一の方法は、家族や隣近所、会社といった小規模なコミュニティに的を絞って、ただちに役立つことを示し、地域単位でのクリティカルマスに達してから、地方や国レベルに規模を拡大していくというものである。