SDGsへの取り組みやESG投資などが一般化し、企業の公益性に対する市場の注目がかつてないほど大きなものとなっている。CSR(企業の社会的責任)からCSV(共有価値の創造)へと発展的進化を遂げてきた企業の社会課題への取り組みだが、新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって、また新たな局面を迎えつつある。グローバル企業の多くが最優先テーマとして注目するキーワード「Responsible Business」について解説する。

社会貢献を成長に変える未来のビジネスの在り方

「Responsible Business」という言葉をご存じでしょうか。現在、世界中のさまざまな業界の企業から注目を集めるこのキーワードは、アクセンチュアにおいても2020年度以降の最優先のテーマとして位置付けられているものの一つです。

 多くの方にとってはまだ耳慣れないこの言葉は、一言で言うと「企業が社会課題の解決への貢献と自社のビジネスを両立させるための取り組み」のことを指します。より具体的なイメージを持っていただくために、まずは企業の社会貢献に関連した経営モデルの進化の歴史から説明します。

 各業界の先進的な企業の多くは、これまで社会課題の解決に関して、3つの段階を通じて貢献してきました(図1)。

 まず、レベル1の「Compliance & CSR」は読んで字のごとく、「企業の義務として、コンプライアンスを順守しながら、社会の持続的な発展に貢献していく」というものです。しかし、この段階の社会貢献は、利益を得るための企業活動とは一定の区別がなされ、自社のビジネスとの関連性が低いほど志が高いと評価されていました。

 次に、レベル2の「Performance & Shared Value」は、いわゆる企業戦略に沿ったESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)と呼ばれるものです。自社のビジネスの実践において、それを取り巻く環境への負荷に配慮しながら、エネルギー消費を低減していけるか。また、そのためのガバナンスが機能しているかを明確に社会に示すことで、企業の信頼と中・長期的な成長を担保するという考え方です。

 そして、この論考の主題であるResponsible Businessは、レベル3の「Leadership & Social Impact at Scale」に該当します。これはレベル1、レベル2がさらに進化した未来のビジネスを支える概念で、わが国でも一昨年あたりから急速に浸透しつつあるSDGsへの対応もこのレベルに該当します。
※SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略。2015年9月の国連サミットで採択され、国連に加盟している193カ国が2016年から2030年の15年間で達成するために17の目標を掲げている。