依然として収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は、私たちの仕事や生活にさまざまな変化をもたらしています。働き方の観点では、多くの人々が新たなワークスタイルへの移行を余儀なくされ、業務の進め方や顧客との接点も大きく変わろうとしています。こうした中で、ポストコロナ時代を見据えて組織運営をどのように変革し、そこで必要となる人材を育成していくかは、全ての企業にとっての最優先の課題となっています。本論考では、今後の働き方や組織運営の在り方について、目指すべき方向性と改革のヒントをご紹介します。

「生産性改革」はCOVID-19以前からの日本企業の課題

金若秀樹
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部
コンサルティンググループ 日本統括
マネジング・ディレクター

明治学院大学卒業後、1992年にアクセンチュア入社。通信業界を中心に、全社DXプロジェクト、データアナリティクスJV立ち上げプロジェクト、全社カルチャーチェンジプロジェクト、全社バックオフィス業務改革プロジェクトなどを多数リード。

金若:コロナ禍における新たな働き方を考える上で、必ずと言っていいほど出てくるのが「いかにして価値創出業務や効率性追求業務の生産性を維持・向上させるか」という論点です。しかし、そもそも主要先進7カ国中最下位*1といわれる日本企業の生産性の低さは、COVID-19をきっかけに議論されるようになったわけではなく、これまでも長年にわたって指摘され続けてきた課題でした。その既知の課題の存在がCOVID-19によってより鮮明となり、日本企業に大きなインパクトをもたらす結果となっているのが今の状況です。

 では、企業の側はこうした状況をどのように捉えているのでしょうか。COVID-19によるパンデミック以降に私がお話をさせていただいた30人ほどの経営者の方々は、全員が「今後、COVID-19以前の働き方に戻ることはないだろう」とお話しされています。逆にCOVID-19以前から社内に存在していた不合理や閉鎖性の改革に取り組むチャンスだという声も多く聞かれます。

 とりわけリモートワークの常態化は、日本のナレッジワーカー/オフィスワーカーに劇的な変化をもたらし、COVID-19が収束した後もリモートワークを希望する人は、すでに全体の過半数を超えています(図表1)。また、こうした意見が若い世代やハイパフォーマー、女性から多く寄せられているのも見逃せない点です。

 すでに日本においては、ジョブ型雇用(職務を限定し、それに適した人材を採用する手法)やアウトカム重視の生産性改革に着手する企業が現れ始めており、また大手企業を中心に在宅勤務の標準化や社内制度の変革事例が報告されるようになっているのは、こうした課題に対する具体的な施策が動き始めていることを示しています。

*1 日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2019」より