ブロックチェーン技術は、「取引コストの大幅な削減」「流動性・資産価値の向上」「IoT/M2Mビジネスでの応用」という3つの側面から、社会や生活、ビジネスのインフラを劇的に変える可能性を秘めている。しかし、既に高度なインフラが発展している日本においては、スイッチングコストの高さがハードルとなり、大企業主導でのブロックチェーンの導入は思うように進んでいない。
しかし、ブロックチェーン技術はひとたびデファクトスタンダードが出来上がるとそこに収斂する動きが急速に進み、一気に社会インフラに溶け込む可能性が高く、手をこまぬいていると手遅れになってしまうジレンマを抱えている。"破壊"と"創造"をもたらす、このブロックチェーンという技術に企業は今後どう向き合っていくべきか。

ブロックチェーン導入を躊躇させる
既存インフラの存在

――ブロックチェーンのメリットは理解しつつも、日本の大企業はなかなか導入に踏み切れないようですね。なぜでしょう?

中村 多くの大企業がブロックチェーンの導入に二の足を踏んでいるのは、既存のインフラ(決済・送金など)が存在すること、不可欠な部分は、データベース/インフラを既につなげていることが大きな要因として挙げられます。そのため、新たにコストをかけてまで既存のデータベース/インフラをブロックチェーンに切り替える明確な理由がなく、モチベーションも上がりにくいことが背景にあります。(図1)

 一方、スタートアップや小規模企業は、何も持たないところからスタートしているので、ブロックチェーンを導入しやすい環境にある一方で、繋がることによって初めて効用を産み出すという側面に関しては、企業・社会を巻き込む力が弱いという点において、苦戦しているといえるでしょう。

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出典:アクセンチュア