3つの側面から“破壊”と“創造”が起こる

――そもそもブロックチェーン技術はなぜ重要なのでしょう?

田中 ブロックチェーンによる“破壊”と“創造”が進み、次の3つの側面からインフラの再編が起こる可能性があるからです。(図2)

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出典:アクセンチュア
田中佑貴
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部
シニア・プリンシパル

東京大学教養学部卒。2006年アクセンチュア入社。テクノロジー戦略グループの中心メンバーとして、エンタープライズ・アーキテクチャ、テクノロジー戦略を専門とする。 金融機関を中心とした大企業に対し、ITアーキテクチャやテクノロジー組織の観点でのデジタル・トランスフォーメーションや、先端テクノロジー起点での事業立案等のプロジェクトに従事。

 一点目が「①取引コストの大幅な削減」。ステークホルダーが共通のデータベース上で取引を執行することで、いわゆる「STP化」により従来と比べ圧倒的に少ない手数で商取引を完結できます。疑似通貨(行内取引/海外送金など)やトレードファイナンスなどが該当します。

 2点目は「②流動性・資産価値の向上」です。①に加え資産のトレーサビリティが担保されることで、アセットの管理と市場型取引を格段に低コストで行えるようになります。非上場株、不動産・版権などの流通市場や、トレーサビリティが資産価値に直結する貴金属や中古車などの取引における利用が考えられます。

 最後は「③IoT/M2Mビジネスでの応用」です。家電+M2M決済など、リアル世界がブロックチェーンに繋がることで、小口給電などの微細な経済活動を収益機会として捕捉することが可能になります。

 大企業においては、当初は「①低コスト化」によりコスト削減を狙う動きが先行しましたが、近年は「②流動性・資産価値の向上」への取り組みが活発化しています。従来相対で取引されてきたアセットの流動性の向上や、中古品などこれまで商流に乗らなかった「ニッチアセット」の取引機会が提供され、新たな収益プールが生まれてきています。