今求められるIT部門の抜本改革とは

――では、具体的にどのような推進体制が求められますか。

田中 まず大前提として、IT部門が主導的役割を担うことが不可欠です。技術的な能力が要求されるということもさることながら、冒頭で申したように、「既存のデータベース/ITインフラとつながることで価値が発揮される」ことからすると、既存のITインフラを熟知したIT部門がこれを担うことが合理的です。

 一方で、従来のIT部門の役割からは大きく踏み出さなければなりません。特にブロックチェーンは技術特性として、複数のプロトコルレイヤーを重ねてプラットフォームを構成する構造を持っています。データレイヤー、コンセンサスレイヤー、インセンティブレイヤー等をどのように組み合わせることで分散型ガバナンスを機能させるか、といった設計をするためには、技術的理解に基づきビジネススキームをデザインするスキルが不可欠です。これを従来の「ユーザー、IT」の役割分担で実装することは困難を極めるでしょう。

 そのためには、従来の一般的発想である「製造工場」としてのIT部門から脱し、一つの事業部門として位置付け直すことが必要です。これはつまりIT部門がP/Lを負い、自ら収益機会を追い求め、リスクを負って投資し果実を刈り取る存在になることを意味します。このためには、「KPI」「ガバナンス」「組織・人材」「アーキテクチャ」「ソーシング」という5つの要素において、従来とは異なる思想を埋め込む必要があります。(図4)

出典:アクセンチュア