職場でつながりが豊富な人は誰か

 マイクロソフトのある部門を例に挙げよう。

 筆者らの研究では、この部門の従業員が出席するミーティングは平均して週に9件、送信するメールは週109通だった。しかし、送信メール数の上位20%を見ると、送信メールは週173通以上で、下位20%では33通以下だった。同様に、ミーティング数の上位20%が出席するミーテイングは週14件以上であるのに対して、下位20%では4回以下だった。

 これらの基本的な数字がわかれば、比較的つながりが多いのは誰かを明らかにすることができる。その結果は驚くべきものではなく、組織のピラミッドの上層にいる管理職ほど、ピラミッドの下層にいる従業員よりもつながりが多い。

 たとえば、ピラミッドの上層にいる管理職が出席するミーティングは週平均13件だったが、さほど上層ではないスタッフの場合は7件だった。送信メール数もポジションの高い管理職は平均190通であり、ポジションが低い従業員の78通を2倍超上回った。

 またピラミッドの上層か下層かにかかわらず、管理職が出席するミーティングは週16件で、役職を持たない従業員の8件の2倍であった。送信メール数は前者が239通に対して後者が89通と、3倍近くに上る。

 他者とのつながりは多くの恩恵をもたらす。筆者らの研究では、管理職の地位やレベルにかかわらず、多くのつながりがある人は総じて、仕事に対するエンゲージメントが高かった(より張り切って出社して仕事をする)。たとえば、送信メール数で上位20%の人は、下位20%よりも仕事へのエンゲージメントが6%高い。

 また、つながりの多さは行動にも影響を与える。情報に通じた人ほど、発言も多いことは道理にかなっている。

 筆者らの研究では、つながりが多い人は仕事を取り巻くさまざまな問題(やるべき仕事、部署内の雰囲気、ダイバーシティやインクルージョン)について声を上げる可能性が高かった。たとえば、誰かと仕事上の連携を取る必要があるときに声を上げると答えた人は、多くのつながりを持つ従業員が72%だったのに対して、つながりが乏しい従業員は55%にすぎなかった。

 しかし驚いたことに、つながりが多いことにはマイナス面もあった。社内でつながりが豊富な従業員は、せっかく構築した人間関係を壊すような行動には関わらないことが多い。筆者らの研究では、つながりの多い従業員は、きわめて繊細で個人的な問題(自分のキャリアやワークライフバランスなど)に対して声を上げる可能性は低かった。

 また、つながりの多い人がワークライフバランスに満足している割合は16%低く、現在の仕事量のおかげでまともなワークライフバランスを築けていると考える人の割合は20%低かった。

 大量のメールとミーティングは、彼らが仕事を終えるための時間を奪い、仕事の負荷や時間を増やしている可能性が高い。労働時間が長くなると、自分や家庭のことに費やす時間は短くなり、仕事とプライベートのバランスが崩れてしまう。