
組織内で部門や階層の垣根を超えたネットワークを構築できると、それは仕事を円滑に進めるうえで多くの恩恵をもたらす。しかし、過度のつながりはメールや会議などのコミュニケーションを増幅させ、ワークライフバランスが崩れる原因にもなる。本稿では、筆者とマイクロソフトのチームが実施した「つながり」の定量化に基づき、行き過ぎたコラボレーションの負の側面とその克服法を示す。
ネットワークづくりが上手な人と下手な人がいる。たいていどの部署にも、いろいろな人に関して、いろいろなことを、誰よりも先に知っている人がいるものだ。筆者のチームは職場での「つながり」を定量化するとともに、その恩恵(と落とし穴)をより正確に見つけることに初めて成功した。
これは新しい測定方法のおかげで可能になった。社会学者が職場におけるつながりを測定するときは伝統的に、そこで働いている人たちに対して、何人を知っていて、何人と交流があるかを聞くだけだった。全スタッフの名簿が配られ、友人は誰か、キャリア上のアドバイスを求める人は誰か、仕事で助けが必要なときは誰に頼るか、という具合にマークしてもらうのだ。
そうした膨大な量のアンケートに参加するようスタッフを説得し、実際に質問に答えてもらい、それぞれのネットワークの違いを調べるのは大変な作業である。また、対象者に関する選択バイアスが介入する余地も大きい。
新しいアプローチは、既存のデータを分析するための、より科学的な方法だ。ある従業員が会議に参加したり、メールを送ったりすると、それはコラボレーションに関する情報になる。会社のメール送信記録を見れば、社内で最も多くのつながりを持つ人をあぶり出すことができる。
筆者のチームは、マイクロソフトのヒューマンリソース・ビジネスインサイツ部門およびワークプレイス・アナリティクス部門と協力して、こうしたコラボレーションのパターンを調べ、それが従業員体験にどのような影響を与えているか調べた。
具体的には、つながりが豊富な従業員は、社内向けに大量のメールを送信するとともに、頻繁にミーティングを持っている(すなわち送信メール数とミーティング数の上位20%)に違いないと考え、その行動を送信メールもミーティングもさほど多くない人(送信メール数とミーティング数が下位20%)の行動と比較した。